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雪の歌(大寒)

「はい、ちょっとストップ」
 音楽の高藤先生が、ピアノの伴奏の手を止めて言いました。
 歌っていたクラスのみんなが、一斉に口を閉じます。
「う〜んとね、三組さんは元気いっぱいで、それは素晴らしいんだけど…」
 高藤先生は、みんなの顔を見回しながら、困ったように笑いました。
 さやちゃんの方を、ほんの少しだけ長く見ていた気がします。
「周りの友達の歌声を聴きながら歌ってみようか。
 クラス全員の声が揃うと、きっともっと素敵な歌になるよ」
 聴きながら歌うなんて難しいなぁと、さやちゃんは思いました。

 一年三組の担任の春日先生は、春になったら結婚します。
 披露宴では、クラスみんなで歌をプレゼントしようと決めました。
 さやちゃんは歌が大好きです。
 優しい(怒るとうんと怖いけれど)春日先生も大好きです。
 だから、張り切って歌の練習をしました。
 学校へ行くとき、帰り道、お風呂の中、ご飯を食べているときにも。
「さや。ご飯中はだめ。ちゃんと食べてからにしなさい」
 お母さんに叱られました。
「さやは歌が上手だねぇ。その歌、さやが作ったの?斬新だね」
 ビールを飲んでいたお父さんが言いました。
 さやちゃんは(ザンシンってなんだろう?)と思いながら答えました。
「違うよ。ほら、テレビでお兄さんたちが歌っていたの。有名な歌。
 お母さんも好きだって言ってたでしょ」
 お父さんはお母さんと顔を見合わせ、しばらく考え込んでいました。
「…そっか、うん、でもあれだな、元気に歌うのが一番だよな、うん」
 なんだかお父さんも、高藤先生と同じようなことを言いました。

「さやさん、ちょっといい?」
 三回目の歌の練習が終わった後、帰ろうとしたさやちゃんは高藤先生に呼び止められました。
「さやさんは大きな声で歌えて、とても良いと思います」
 高藤先生は、さやちゃんのお母さんと同じぐらいの年齢の先生です。
 やっぱり優しい先生ですが、挨拶や整理整頓ができないと、春日先生よりも厳しく叱られます。
 だからさやちゃんは、少し緊張して高藤先生の前に立ちました。
「この歌、先生と一緒に歌ってみてくれる?」
 咲いた咲いたチューリップの花が。
 幼稚園で何回も歌った歌だから、さやちゃんは元気いっぱい歌えました。
 先生は、うん、うん、と何度も頷きました。
「さやさんは、音程とリズムを掴まえるのが、ちょっと苦手みたいね」
 先生は、ピアノの鍵盤をポン、と叩きました。
「この音と同じ高さの声、出せる?」
 さやちゃんは「あ〜」と出してみました。
「そうだね、もう一回。ピアノの音をよく聞いてね」
 ポン。「あ〜」。
「うんうん、だいぶ良くなった」
 何度か音階の練習をしてから、先生はさやちゃんにCDを一枚渡しました。
「プレゼントの歌が入ってるの。これを聞いて練習してみてね」
 いいもの貰っちゃった。さやだけいいのかな。
「みんなの声とピアノの音をよく聞いて、リズムも合わせて歌ってみようね」
「はい!」
 さやちゃんははっきりと返事をしてから、先生に「さようなら」を言いました。

 いつものように歌いながら帰ろうとして、さやちゃんはふと足を止めました。
 お家のすぐ近くの公園です。
 友達の声を聞いて、ピアノの音も聞いて、リズムに合わせて歌う。
 みんなで歌うのって、本当に難しい。
 空は灰色。冷たい風がさやちゃんの頬を掠めます。
 ピンクのふわふわのマフラーに顎を埋めて、さやちゃんは考えました。
 もしかして、さやの歌、変なのかな。
 そういえば、歌の練習をしているとき、隣の友達が少しずつ離れていかなかったっけ?
 高藤先生が伴奏を途中で止めるとき、いつもさやの顔を見ていなかったっけ?
 お腹のところが、急に重たくなった気がします。
 さやの歌、変なのかな。
「おい、今日は下手くそな歌、歌わないのかよ」
 いきなり、声がしました。
 いつの間にか、ぶらんこに一人の男の子が座っていて、ニヤニヤとさやちゃんを見ていました。
「やっぱり、さや、歌が下手なんだ」
 さやちゃんは我慢できずに泣き出しました。
 歌が大好きなのに。長くて難しい歌詞も全部覚えたのに。
「おい!泣くなよ、おい!」
 男の子は大慌てです。
 ぶらんこから飛び降りて、さやちゃんの所におずおずとやってきました。
「俺はいいと思うよ、少しっくらい音外れても、ワンテンポ遅れてもさ、ほら、お前、大きな声出るじゃん?」
 先生もお父さんもそう言ったけど、さや、歌が下手なんだ!
 さやちゃんは泣き止みません。
「それに俺、お前の声、好きなんだよ」
 涙のたまった目で、男の子を見上げます。
「透き通ってて、のびのびしていて、なんかキラキラしてるんだよ。
 生まれたばかりの雲雀が、初めて鳴いたときみたい」
「…ほんと?」
 男の子は照れくさそうにそっぽを向きました。
「だからさ、下手なのは練習すればいいじゃん」
「…うん」
 男の子はほっと息を吐きました。
「ほら、歌ってみろよ」
 さやちゃんはこくんと頷いて、さっき高藤先生と練習したことを思い出しながら、ゆっくり歌ってみました。
 男の子は相変わらずそっぽを向いたまま、でも、真剣に耳を傾けました。
「だいぶ良くなってる」
 独り言みたいな言葉に励まされて、さやちゃんはもう一回、丁寧歌いました。
 もう一回。もう一回。
 男の子は黙って、練習に付き合ってくれました。
 鼻の頭にポツン。
 冷たい粒が当たりました。
 細かい雪が舞ってきたようです。
「そろそろ帰らないと、親が心配するよな」
 男の子に言われて気がつきました。
 公園の街路灯が、いつもより早く灯りました。
「最後にさ、お前が好きな歌を好きなように歌ってよ」
 さやちゃんはちょっと考えてから、大好きなアニメの主題歌を歌いました。
 街路灯の明かりに、舞い落ちてくる粉雪がキラキラと反射します。
 足下では、風に舞い上げられた雪がクルリクルリと踊るように輪を描きました。
 さやちゃんは、やっぱり歌うのが大好きだと思いました。
 歌い終わった途端、男の子は思いっきり笑い出しました。
「やっぱ、へったくそ!」
 でも、最高。
 男の子は、さやちゃんの頭に積もった雪を優しく払い落とすと、
「練習しろよな」
と言って、走っていってしまいました。


 高校生になったさやちゃんは、合唱部に入りました。
 今でもうっかりすると、すぐに音程を外してしまいます。
 テンポも遅れがちで、よく先輩に注意されます。
 でも、誰よりも熱心に練習に参加しています。
 あの公園の男の子とは、その後、二度と会えませんでした。
「誰だったんだろう」
 公園で歌えば、もう一度会えるかな。
 私の声、まだキラキラしてるかな。
 そう思いながら、古びたブランコの前を通るのです。

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雪が降るかと思ったら小雨の大寒。
真っ白な霜は、3年前の大寒の朝の写真。
今年は、気温だけ見れば暖かな大寒となりましたが、真冬の雨は雪よりも冷たく感じます。
ますます2月3月の大雪が恐ろしくなってきました。。

中学校で合唱部に入りました。
音楽室で3年生二人が、なんでもない風に歌ってくれたのが、確か「流浪の民」。
すっごく綺麗な歌声で、見事にハモってて、こんな風に歌えたらどんなにいいだろう…と思ったことを、今でも鮮明に覚えています。
ただ私、本当に音痴なんです。
そして、徹底的に、リズム感が、ない。
さやちゃんのように一生懸命練習しましたが、結局、あの先輩たちのようには歌えませんでした。
私の頭の中には、綺麗な歌もかっこいい歌もいっぱい詰まっているのに、歌おうとするとまったく違ったものになって出てきます。。
やれやれ。。

インフルエンザが猛威を振るっていますね。
職場でも、パタパタと数人が倒れました。
なんとか貰わないように、乗り切りたいと思います。
寒い日はまだまだ続きますが、日の光は確かに力強さを取り戻しつつありますね。

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by bowww | 2019-01-20 22:44 | 作り話 | Comments(0)

人しづか(小寒)

 隣の席のカップルは学生同士だろうか。
 互いに自分のスマホを見つめたまま、ほとんど会話もない。
 二つのコーヒーと一つのチーズケーキが、テーブルの上で冷めていく。
 テーブルの上に並んだ直後にだけ、女の子が盛んに写真を撮っていた。
 スマホなら、一人の時にでも好きなだけ弄れるだろうに。
 せっかく二人で過ごせる時間なのに、もったいないと思ってしまうのは、こちらがすっかりおばちゃんになった証拠だろう。
 窓の外で何か動いた気がして目を遣る。
「…あ、雪」
 声を出したのは、私ではなく隣の席の女の子だった。
 男の子も目を上げた。
 それから、二人がようやく視線を合わせた。
 女の子がケーキを一匙、男の子がコーヒーを一口。
 女の子がにっこり笑う。男の子も釣られて微笑む。
 なるほど、楽しく過ごしてはいるらしい。

○○○

 膝の上の赤ん坊を、そっと抱きしめる。
 しっとりあたたかくて、大きさの割にずっしり重い。
 まだぽやぽやの頭に鼻を埋めて、ミルクの匂いを思う存分嗅いでやる。
 どうせもう数年すれば、おとなしくこんなことをさせてはくれないだろう。
 父親の自覚なんて、まだまだ湧かない。
 首が座ったから、やっと落ち着いて抱けるようになったものの、扱いはやっぱりおっかなびっくりになる。
 そんな気配を敏感に察知するのだろう、俺の腕の中では居心地が悪そうにモゾモゾ動く。
 もうすぐ、きっとむずかり出す。
 近所のコンビニに買い物に行った妻の帰りを、少しじりじりして待つ。
 窓際に立って、赤ん坊を静かに揺らす。
 泣くなよ、泣くなよ。
「…あ、雪」
 灰色の空から、チラチラと雪が舞い落ちてくる。
「あ〜」
 赤ん坊が、小さな手を伸ばして俺の顎を掴んだ。
 なかなかの力強さに、思わず笑ってしまう。

○○○

 ハンドルを握る彼は、さっきから何も喋らない。
 私も何も話さない。
 車の中は暖房が効いていて、カーステレオからはジャズが流れている。
 これは私が彼に教えてあげたピアノトリオだ。
 そして、初めてのデートはこのトリオのコンサートだった。
 こんなタイミングで流さなくてもいいのにと思うけれど、彼はそんなことさえ忘れているか、どうでもいいことなのだろう。
 好きな人が出来たと聞かされたとき、あまり驚かなかった。
 気づいていたわけではない。疑ってもいなかった。
 それなのに、彼の話を淡々と聞いて受け入れている自分が不思議だった。
 そのまま淡々と別れることが決まった。
 外の空気が吸いたくなって、窓を僅かに開けた。
「…あ、雪」
 呟きに、返事はない。

○○○

 切りが良いところまで、と思って仕事を片付けているうちに、すっかり遅くなってしまった。
 パソコンの電源を切り、大きく伸びをする。
 フロアには誰も残っていない。
 俺は要領が良くない。自分の仕事だけでもいっぱいいっぱいなのに、何か頼まれれば、ついそちらを優先してしまう。
 結局、こうやって残業する日が多くなる。
 まぁ、性分だから仕方がないか。
 コートを羽織って外に出る。
 冷たい風に思わず首を竦める。
 額に、冷たい粒が当たった。
「…あ、」
「雪」
 後ろの声にびっくりして振り向くと、去年入社した女子社員と目が合った。
 照れくさそうに笑って頭を下げる様子に、こちらの頬も熱くなる。


  ゆきふるといひしばかりの人しづか  室生犀星


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新年明けて六日、今年もよろしくお願いいたします。
とても寒かったですが、良いお天気が続いた穏やかなお正月でした。
それにしても、例年に比べて雪が少ない冬です。
春に近づいた頃、辻褄合わせのように、どかんと大雪が降るのではないかと戦々恐々としています。


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by bowww | 2019-01-06 21:04 | 作り話 | Comments(2)

風邪の日(冬至)

 うつら、うつら…。
 さっきから、おかしな夢ばかり見ている。

 咳をするたびに身体中が軋む。関節も頭もツキツキと痛い。
 だるい。
 寝返りを打つのも億劫だ。
「まいったな…」
 クリスマスだというのに、寝込んでしまった。
 美和も和音も、とても楽しみにしていたのに。
 ツリーに明かりを灯して、大きなケーキを食べて、みんなでゲームをしたら早く寝なくちゃ。
 夜更かしする子、歯磨きしない子、妹を泣かせる子、お姉ちゃんを叩く子…。そんな子たちのところには、サンタさん来てくれないんだからね。
 ああ、そうだ、オムライスを作ってあげる約束だった。
 唐揚げも。シチューも。
 ごめんね、今夜はちょっと無理そう。
 プレゼントを早めに用意しておいたのがせめてもの救い。
 お父さんが早く帰ってきてくれるといいんだけれど。

 うつら、うつら…。
 横になって目を閉じているのに、グラグラと目眩がする。

 パタパタパタパタ!
 あれは和音の足音。
「しっ!静かに!お母さん、具合悪いんだから静かにしてなきゃ駄目なんだよ!」
 和音を叱る美和の小声。
 最近、すっかりお姉さんらしくなって。
「お姉ちゃん、お母さん、苦しいの?」
「そうだよ、お熱があるんだよ」
「…死んじゃうの?」
「ばか!」
 あ、美和が叩いた。和音がワッと泣き出した。
「静かに!お母さん、起きちゃうってば!」
 仕方がない…。
「みぃちゃん、かずちゃん…」
 二人の名前を呼ぶと、部屋のドアがそぉっと開いて、隙間から二つの顔がひょっこり覗いた。
「風邪うつるといけないからね、ちょっとだけ」
 手招きすると、二人が駆け寄ってくる。
「ごめんね、お母さん、お熱があるからオムライス作れない。
 お父さんが帰ってくるまで、二人で仲良く遊んでてくれる?」
「お母さん、苦しいの?死んじゃうの?」
 和音は、もう半べそだ。
 美和は、口を真一文字に結んで私を見つめている。
 私は思わず笑ってしまう。
「大丈夫、大丈夫。ゆっくり寝れば、明日には元気。
 だから、お父さんとみぃちゃんとかずちゃんでケーキ食べてね。
 サンタさんもちゃんと来てくれるから」
 私の左手を美和が、右手を和音がぎゅっと握る。
「お母さん、早く良くなってね」
 二人は手を繋いで、部屋を出て行った。

 うつら、うつら…。
 ああ、喉が渇いた。

 浅い眠りから覚めると、枕元にミカンが三つ。クリームのついたイチゴが二つ。
 眠っている間に、ちびサンタが二人、来てくれたらしい。


 吸い飲みを傾けると、こくこくと飲み干した。
「喉、渇いてたみたいね」
 レースのカーテンが、冬の柔らかい日差しに揺れる。
 加湿器がコポンコポンと鳴って、水蒸気を吐き出す。
 サイドテーブルには、とぼけた顔をしたサンタクロースの人形と、『おばあちゃんだいすき』とクレヨンで描かれた似顔絵が飾られている。
「お母さん、どう?」
「うん、最近はずっと眠ってばかり」
「そう…」
 姉妹は、ベッドを挟んで顔を見合わせる。
 母親は二人の間で、静かな寝息を立てている。
 妹が、母親の右手をそっと握った。
「お母さんの手、こんなに小さかったっけ」
 姉は、皺だらけの左手をそっとさすった。
「小さくなっちゃったのよ」
「そうだよね…」
 あ…。
 二人は同時に声を上げた。
 眠っているはずの母親の顔に、ゆったりと微笑みが浮ぶ。
「…なんか、嬉しそうじゃない?」
「楽しい夢でも見てるのかな」
 パタパタと駆けてくる足音と、調子っ外れのジングルベルの歌が、ドアの外に響いた。


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子供の頃、母親が寝込むととても不安になったことを思い出します。
あと、もう少ししたら、また同じ気持ちを味わうのかと思うと、ちょっと途方に暮れます。
母、まだまだ達者なのですけれど…。

写真のサンタに、母も私も一目惚れ。
ほかにも沢山の仲間たちがいるようなので、毎年少しずつ集めたいと思います。
毎年この季節が一番殺伐とするので、クリスマスのキラキラ感とはまっっったく無縁なのですが、せめてもの癒やしです…。

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穏やかな冬至の日でした。
最近、夜になると頭痛がひどく、スマホやパソコンに触れられませんでした。
お邪魔できずに申し訳ありません…。


by bowww | 2018-12-22 22:52 | 作り話 | Comments(0)

冬の花(大雪)


 春先、おばあちゃんの家に行くと、真っ白な花をいっぱいに咲かせたコブシの大木が迎えてくれた。
 その下で、おばあちゃんがニコニコと手を振っている。
「綺麗でしょう?花嫁さんみたいでしょう?」
 純白のドレス? それとも白無垢?
「優花(ゆうか)ちゃんがお嫁さんになったら、きっともっと綺麗になるねぇ」
 春が来る度におばあちゃんはそう言った。
 幼い私は無邪気に頷いていた。


「優花、式はどうするの?」
「う〜ん、やらなきゃいけないかなぁ…」
 母の問いに、生返事をする。
 子供の頃は、女の子は誰でも花嫁さんになるものだと思っていた。
 小学校に行くのと同じように、結婚するのが当たり前だと思っていた。
 どうやら、そう簡単な話ではないらしいと分かった頃には、私は立派な「イキオクレ」となり、周りを見渡せば、友人たちはとっくに良いパパママになっていた。
 仕事が忙しかったというのは言い訳だろう。いつも目の前の雑雑としたことに気を取られて、うかうかと年を取ってしまった。
 このまま一人で過ごすのだとぼんやり覚悟を固めていたのだが、ひょんなことから気が合う相手が見つかり、トントンと結婚が決まった。
 とはいえお互いに四十路、相手は再婚だ。
 派手な披露宴は勘弁してほしい。気力体力が追いつかないし、呼ばれる友人たちも迷惑だろう。
「まぁ、あんたたちが決めればいいことだけど、きちんと報告することも礼儀のうちよ。
 二人っきりで生きていけるわけじゃないんだからね」
 私以上に私の結婚を喜んでいる母だから、お叱言もありがたく頂戴しておく。
 年が明けたら、ささやかな食事会程度の式を挙げようかと話がまとまった。

 祖父母が暮らした家は、伯父夫婦が引き継いだ。
 妹である母を可愛がっていた伯父は、その延長のように私のことも気にかけてくれる。
 結婚の報告がてら、久しぶりに伯父と伯母を訪ねた。
 すき焼き、おでん、自家製の漬物と、私の好物ばかりがたっぷり並ぶ食卓は、子供の頃から変わらない。
 今はそこにビールも加わって、思い出話が尽きない。
 昔はそうでもなかったが、伯父は最近、亡くなった祖父によく似てきた。
 年を取るとそういうものなのだろうと考えていたところで、
「優花はお母さん…、というより、死んだばあちゃんによく似てきたよなぁ」
 と、伯父がしみじみ呟くので、ちょっとだけ複雑な気持ちになる。
「おばあちゃん、優花ちゃんの花嫁姿を楽しみにしてたわよねぇ」
 伯父の言葉に頷いてから、伯母が言葉を足す。
 少しぬるくなったビールがほろ苦い。

 喉が渇いて目が覚めた。
 時間を確認すると午前三時過ぎだった。
 パジャマの上にカーディガンを羽織り、足音を忍ばせてキッチンへ行く。
 古い家だから、床から冷気が這い上ってくる。
 身震いしながら水を飲み、ふと窓の外の明るさに気がつく。
 今日は満月だったっけ?
 カーテンの隙間から、庭を覗き見た。鼻先が冷たいガラス窓に触れる。
 ……え?花?
 花?満開?冬に?
 おばあちゃんのあのコブシが、大きく枝を拡げ、純白の花を無数に咲かせていた。
 月の光に染まったように、花びらの一枚一枚が発光している。
 思わず窓を開ける。
 手を伸ばし、花に触れる。
 しっとりとした絹のような花弁は微かに震え、ほわと散って、私の手のひらで溶けた。
 右手は、いつまでも暖かかった。

 翌朝、明るくなった庭を確かめる。
 一面に降りた霜が、朝の光にキラキラと輝いている。
「…昔、大きなコブシの木があったよね?」
 伯父に尋ねた。
「そうそう、ばあちゃん自慢のコブシな。
 あれは、ばあちゃんが死んだ翌年だったか、台風で倒れちゃったんだよ。
 古い木だったから、根元も傷んでいたんだろうなぁ」
 伯母が淹れてくれるコーヒーの香りが、暖かいリビングに満ちる。
 ウェディングドレスだけでも着ておこうか。
 出来るだけシンプルな、シルクの白いドレスを探してみよう。
 案外、彼も面白がってくれそうだ。

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通勤路に、大きなコブシの木があるお宅があったのです。
早春には、それはそれは見事な咲きっぷりで、車で通過するだけだとはいえ楽しみにしていました。
夜にはささやかにライトアップもしていたから、きっとご自慢の木だったのだと思います。
それが一昨年だったか、火事でお家は全焼、住んでおられた方は皆ご無事だったのが不幸中の幸いだったのでしょうけれど、あの立派な木は焼け焦げてしまいました。
お家が解体され、コブシが切り刻まれて積まれているのを見かけたときは切なかったです。
もう一度、あの花が見たいなぁ…と思って書いてみました。

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今年は暖冬の予報が出ているものの、今週末には真冬並みの寒気がやってくるとか。
数日前に夏日を記録したところもあるぐらいなのに、本当に季節がしっちゃかめっちゃかですね。
師走でバタバタ、やっぱり例年通りの余裕のなさです。
皆様もご自愛くださいませ。
写真は宝物のの一つ、硝子でできた万華鏡です。
iPhoneのレンズを覗き口にくっつけて撮りました。

 
 


by bowww | 2018-12-07 22:55 | 作り話 | Comments(0)

風の子(小雪)

 ちょうど小学校の下校時刻に当たったようだ。
 皆、私の腰ぐらいまでの背丈だから、まだ一年生だろうか。
 元気いっぱいの集団が、私を追い越していく。
 小さな子供たちは、常にエネルギーを持て余しているのだと思う。
 特に男の子。
 意味もなく駆ける、駆ける。とりあえず駆ける。
 冷たい木枯らしが吹いているのに、上着を脱いで、それを振り回しながら駆ける。
 友達と言い争っていたかと思うと、また駆ける。
 交差点で踵を返してUターン。また駆ける。
 女の子たちはもっと落ち着いていて、二、三人ずつ固まって、お喋りしながら歩いていく。
 私の前にいる女の子たちも、好きなアニメの話で楽しそうに盛り上がっていた。
 一人の男の子が、私の脇を駆け抜けた。
 二人組の片っ方、おさげ髪の女の子の髪をグイッと引っ張って逃げて行った。
 もう一人が抗議の声を上げた。
 おさげ髪の子は、頰を真っ赤にして俯いている。
 大きな目には涙たまっている。
 ははぁ…。


 どうして私にだけ意地悪なんだろう。
 小学生の私は、学校に行くのが憂鬱だった。
 同じクラスのS君は、宿題を忘れてきたり、掃除中に遊んで先生に怒られたり、でも、いつもみんなを笑わせる人気者だった。
 それなのに私にだけは、面白いことは言わないし、「おはよう」と挨拶してもそっぽを向いてしまうし…。
 隣の席になったとき、消しゴムを忘れたらしいS君が、ノートの字を指でこすっていた。紙も指先も黒く汚れて、もちろん字は消えない。
「…貸してあげる」と消しゴムを渡すと、S君は黙って受け取った。
 それきり、返してくれなかった。
 苺の匂いがするピンクの消しゴムは、とっておきのお気に入りだったのに、気の小さな私は「返して」と言えないままだった。

 遠足で、S君と同じ班になってしまった。
 とても楽しみにしていた遠足なのに、班割りが決まった途端、憂鬱で憂鬱で仕方なくなった。
 遠足の当日、私は「お腹が痛い」と母に訴えた。
 仮病ではなく、本当にお腹が痛くなってしまったのだ。
 母は私の様子が少し変なことに気がついていたらしい。あっさりと「じゃ、お休みしようか」と学校に連絡してくれた。
 ホッとすると同時に、あんなに楽しみにしていた遠足なのにと思うと悲しくて、布団の中でポロポロ泣いた。
 泣いて眠って目が覚めると、枕元に、おむすび二つと甘い麦茶の入った水筒が置いてあった。
『からあげは、おなかがなおってからね』と、母のメモが添えられていた。

「あら、こんにちは!遠足のお土産なの?」
 玄関先で、母の明るい声が響く。
 誰か来たらしい。
「心配してくれてありがとう。
 今は寝てるけど、もう大丈夫よ。明日は学校に行けると思う。
 気をつけて帰ってね」
 友達が来てくれたのかな。
 そっと起き出して、階下に降りる。
 母から、小さな紙包みを渡された。
 テーブルの上で開くと、どんぐりが幾つも幾つも転がり出てきた。
「S君が持ってきてくれたのよ」
 どんぐりに紛れて、ピンク色の消しゴムも。
「さて、お夕飯は唐揚げにしよっか」
 母がにっこりと笑った。


 女の子たちを追い越して角を曲がると、さっきのいたずらっ子が一人で、塀際の枯れ草を引っ張って遊んでいた。
「あの子、泣いちゃったぞ」
 小声で教えてやると、男の子は弾かれたようにこっちを見て、真っ赤になった。
 そして引っこ抜いた枯れ草の束を振り回しながら、ブラブラと来た道を戻っていく。
 S君は大人になっても相変わらずお調子者で、おっちょこちょいだ。しょっちゅう私を怒らせる。
 でも、喧嘩した後に買ってきてくれるケーキがいつもなかなか美味しいから、つい許してしまうのだ。


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「子供は風の子」なんて言葉、今でも使うのでしょうか?
確かに昔に比べて、外で遊んでいる子供は少なくなった気がします。
それでも、通学路を元気に駆けている子供たちを見かけると、つくづく「元気だなぁ…」と思います。
「うちの小僧、長いものを見つけると、絶対に拾って振り回す」と嘆く同僚(7歳の娘ちゃん、4歳の息子ちゃんのパパ)の話を思い出して書いてみました。
雪の便りが届くようになりました。
いよいよ冬が始まりますね。

 
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先日、友人と上田市に遊びに行きました。
とてもかっこいい美術館でウィリアム・モリス展を観た後、街をぶらぶら。
古い建物が残っていたり、居心地が素晴らしいブックカフェがあったり。
思っていたよりもずっと素敵な、歩いて楽しい街でした。





 

by bowww | 2018-11-22 18:54 | 作り話 | Comments(0)

トリセツ(立冬)

 最近は、言葉を何でも略したがる。
 ドラマやバラエティの番組名、芸能人の名前、本の題名、施設名に外来語。
 漢字や仮名で表記されていればまだしも、アルファベットを2、3文字並べただけで澄ました顔をしてる。
 「空気が読めない」=KYだなんて、いったいどんな暗号かと思う。
 どれだけ言葉や文字を惜しめば気が済むのだろう。
「次長、新しいコピー機の取説、ここに置きますね」
 総務の若い女性社員が、にこやかに言い置いていった。
「……トリセツ?」
 ぽかんとしていると、部下の田中君が、
「取扱説明書のことですよ」と教えてくれた。
「なるほど…」
 最近の若者は、基本的に優しい。特に年寄りに親切だ。
 彼らにとっては、私はすっかり年寄りの範疇なのだろう。
 職場でそんなやり取りをした帰り道、立ち寄った本屋で物色していると、『妻のトリセツ』という本が目に付いた。
 妻の取扱説明書、ということか。
 いつも買う雑誌と一緒に、その薄っぺらい本も一緒にレジに持って行った。

 妻が入院したとき、娘から猛烈に叱られた。
「一緒に住んでいて、何で気がつかなかったの」
 私がいつも通り出勤した後、妻は自分でタクシーを呼んで病院に行って、そのまま入院となった。
 真っ先に連絡を受けて病院に駆けつけたのは、離れて住む娘だった。
 娘からの連絡で私が病院に着いたときには、手続きなどはすっかり済ませてあった。
「毎日顔を合わせてるのに、お母さんが具合悪いことに気がつかなかったの?」
 若者は優しいが、父親に対しては概して厳しい。特に娘は。
 睨まれるだけで、鳩尾辺りが鈍く痛む。凄い眼力だと恐れ入る。
「…言ってくれれば良かったのに」
 娘の視線を避けて、ベッドの上の妻に言う。
「大したことないと思ってたのよ」
 寝巻きに着替えて、点滴の管をつけているだけで、見慣れたはずの妻が病人に見えてくる。
 そう言われれば、少し痩せただろうか。
「私が入院すると言っても、着替え一つ、揃えられないでしょ?」
 その通りだ。娘の方が、はるかに役に立つ。
「とりあえず、暫くは自分で何とかしてちょうだいね」
 ゴミを出す日、光熱費の引き落としの口座、保険証の置き場所、日用品のストックなどなど、細かくメモした紙を渡された。
「そんなこと、お母さんが心配しなくていいのに」
 娘の厳しい言葉を、妻が苦笑いで受ける。
「シャツはきちんとアイロン。靴は磨いて。それだけはちゃんとしてね」
「…はい」
 としか、返答できない。

 幸い、アイロン掛けと靴磨きは出来る。
 それ以外は、出来ないことだらけだ。
 風呂を沸かすことにさえ、四苦八苦している。
 食事に関しては、米さえ炊ければ良しとする。
 妻が居ないだけで、自分の家がよそよそしく感じる。
 娘が言うとおり、毎日同じ空間に居たのに、妻の不調にまったく気がつかなかった。
 仕事帰りにスーパーで惣菜を買って(サラダとか煮物とか、何となく体に良さそうな物を選ぶ)、昨日炊いた飯を温め直す。
 レンジの加減がいま一つ掴めず、温め過ぎてしまった。熱くて茶碗が持てない。
 パックに入ったままの惣菜の横に、ご飯茶碗を置いて冷めるのを待つ。
 妻の茶碗と自分のが、夫婦茶碗になっていることに初めて気づいた。
 知らなかったことばかりだ。

 職場での昼休み、近くの公園のベンチでひと息入れる。
 昔は後輩たちを昼飯に誘ったりしたものだが、今は滅多に行かなくなった。
 若い連中にとっては気詰まりだろうし、こちらだって気疲れする。
 それでも、妻が入院したことを知った部下たちが、「コンビニ行きますが、次長のお昼も何か買ってきましょうか?」などと気遣ってくれる。
 本当に、近頃の若者たちは優しい。
 うちの娘だって、職場などの目上の人間には親切にしているのだろう。
 気遣いはありがたいが、外食疲れした腹にコンビニの弁当は辛い。
 気持ちだけ貰って、フラッと外に出た。
 久しぶりの青空を見上げる。
 視界に入る桜の梢は、二、三日続いた雨と冷え込みのせいで葉が落ち、だいぶ寂しくなってきた。
 『妻のトリセツ』を取り出して、パラパラとページをめくる。
「妻は夫に共感してもらいたいだけ」「記念日を大切にせよ」「夫には見えていない家事がある」等々。
 要は、女たちの大切にしてるものと、男が重きを置くポイントがズレているのだと言いたいのだろう。
 …と、見当をつけたところで本を閉じる。
 何気なく聞き流していた妻の他愛ない話を、不意に思い出した。近所の庭で花が咲いたとか散ったとか、子供たちがああ言ったとかこう言ったとか。
 そういえば、今年の紅葉は色が冴えているとか言っていたっけ。
 頻りに葉が落ちる。
 本の上に落ちた葉を手に取り、日に透かす。
 虫が食っているが、黄色から朱赤へと変わる色が綺麗だと思う。
 足元に落ちた葉を二、三枚、手に取る。
 昼休みが終わる。
 本に挟み込んで、ベンチを立った。

 病室に着くと、妻は仮眠中だった。
 手術の直後はかなり痛がっていたが、ようやく落ち着いてきたのだろう。
 糊がきいた真っ白いシーツの上で、妻はすやすやと寝息を立てている。
 病気で一回り小さくなった顔が、やけにあどけなく見える。
 暫く、寝顔を眺めていたが起きそうにない。
 昼間拾った落ち葉を、サイドテーブルのマグカップの横に並べて置いた。
「退院したら、何処か温泉にでも行こうか」
 起きていればきっと、「あなたと二人だけじゃつまらないわ」と返されるだろう。
 あの本を、もう少しじっくり、読んでおこうと思う。

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暖かい立冬の日になりました。
急に冷え込んだり、暖かくなったり。
そして気がつけば師走は目の前。
セカセカバタバタ、気持ちだけ慌てて仕事が捗りません。
のろまな自分が歯がゆいばかり。
自分に「お静かに」と言い聞かせて過ごさなくちゃ、と思います。

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by bowww | 2018-11-07 20:16 | 作り話 | Comments(0)

手に拾ふまでの(霜降)

 運良く一人分だけ空いていた席に、体を潜り込ませる。
 電車の中は、仕事帰りの会社員でほぼ満席だ。
 高校生の頃なら、隣の人との距離が近すぎるからと、きっと座るのを我慢していただろう。
 それにあの頃は、三、四十分ぐらい立ったままでも平気だった。
 今は五分でも座りたい。
 スマホを弄る人、器用に折り畳んだスポーツ新聞を読む人、腕組みして眠りこける人…。こんなにたくさんの人がいるのに、車内はとても静かだ。誰もが一日分の疲れを滲ませた、無防備な顔を晒している。
 私だって化粧直しもしていない。疲れと脂が滲んでいる顔に違いない。
 取り出しかけたスマホを鞄にしまって、俯いて目を閉じる。

 電車が駅に停まる度に乗客は増える。
 お年寄りが目の前に立てば席を譲ろうと、そっと周りを窺う。
 私の前には、本を読んでいる五十代ぐらいの男性と、イヤホンで音楽を聴いているらしい若い男性が立っていた。
 これなら譲らなくて良さそうだとほっとする。
 再び視線を落とす。
 おじさんの足元が目に入る。
 焦げ茶色の靴は、履き口が毛羽立って古びてはいるけれど、きちんと磨かれていた。
 自分で磨くのか、奥さんが磨いてくれるのか。今時、夫の靴を毎朝磨いてくれるような奥さんは居ないだろうか。
 実家の母が、「お父さんは、へちゃびれ靴を平気で履いちゃうから」、仕方がなく渋々とといった風に、父親の靴を磨いていたことを思い出す。
 「へちゃびれ」はきっと母の造語だよな、と思い返して可笑しくなった。

 電車の揺れに身を任せて目を閉じていると、眠気が襲ってきた。
 ここで眠り込んで、降りる駅を乗り過ごしてはかなわない。
 目をこじ開けて、スマホを取り出そうとしたら、はらりと何かが膝に降ってきた。
 …葉っぱ?
 本物の葉っぱだ。
 黄から紅へと染まりかけた桜の葉。
 どこから?と思っているうちに、もう一枚、舞い落ちた。
「すみません!」
 おじさんが小声で謝る。
 出所はおじさんの本からだった。
 二枚重ねて、おじさんに手渡す。
 おじさんは恥ずかしそうに会釈して、本に挟み直した。
 公園でひと息入れた時か、街路樹の下を足早に通っていた時か、とにかく色の美しさに惹かれて思わず拾い上げたのだろう。
 おじさんが読んでいる本のタイトルを盗み見る。
『妻のトリセツ』。
 そうか、きっと靴は自分で磨いているに違いない。
 アナウンスが、私の降りる駅の駅名を告げる。


  手に拾ふまでの紅葉の美しき  和田 順子

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秋が年々、短くなっているように感じます。
暑い夏が長くて、一足飛びに冬になってしまうような。
今年は台風や猛暑の影響か、各地の紅葉はいまひとつだと言います。
近い将来、紅葉を愛でることは稀になってしまうのかも知れませんね。


手持ちのiPhoneを、5から8にバージョンアップしました。
(そのためにパソコンのバージョンアップもしなくてはいけなくて、苦心惨憺バタバタでした。。持ち主のスペックが追いついていきません。。)
とにかくカメラの機能がすごいですね。
びっくりするほどクリアに撮れます。
下の写真は、国立科学博物館の日本館で撮りました。
外出先では大いに活用させてもらおうと思います。

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by bowww | 2018-10-23 20:39 | 作り話 | Comments(2)

時刻表(寒露)

 ようやく涼しくなったから、片付けを始めたいと母から連絡があった。
 春先、父が亡くなった。
 前日どころか当日の朝まで何の変わりもなく、母と昼食を取って、「少し食べ過ぎた」と横になったまま意識をなくした。
 気づいた母が救急車を呼び、病院に運ばれたが、意識が戻ることなく三日後に亡くなった。
 典型的な「昭和前期の男」だった父は、家庭では口数も少なく、気難しい人だった。
 私と姉、弟にとっては、子供の頃は「怖い人」、大人になってからは「面倒くさい人」という存在だった。
 父親というものはそういうものだと思っていたから、高校生になって、「誕生日は毎年、お父さんと食事して、何か買ってもらうんだ」と嬉しそうに話す同級生に驚愕した。
 世の中には、家族に優しい父親も存在するのか。
 姉が結婚して子供が生まれ、さすがに孫には相好崩すだろうと思ったが、さほど変化はなかった。
 生まれたての赤ん坊を恐々と抱き、赤ん坊が泣き出した途端に、「母さん!母さん!」と母を呼びつけて、「泣いてる」と押しつけると、そのまま自分の部屋に引っ込んだ。
 姉と私、母は顔を見合わせて、ため息をついた。
「お母さんは、どうしてお父さんと結婚したの?」
「優しくも面白くもないし。家のことだって何もしてくれないでしょ?」
 私たち子供がそう問いかけると、母は、
「そうなのよねぇ、私、どうしてお父さんと結婚しちゃったのかしらねぇ」
と、心底、不思議そうに首を傾げたものだった。

 慌ただしく、お葬式だ、四十九日だと過ごしているうちに暑い夏になり、疲れがたまって倒れられたら困るからと、姉と私は交互に母を自宅に招いた。姉の家では孫と賑やかに、私の家では夫と私の世話を焼いてと、それなりに楽しげに過ごしていた。夏の終わりには、弟が実家に十日ほど帰省していたらしい。
「勢いあるうちに片付けちゃおうと思ってね」
 父は通勤用のスーツなどは退職直後に処分していたし、趣味らしい趣味もないから物も増えなかった。
「あまり片付けるところもなさそうだけれど…」
 私と姉は、がらんと素っ気ない父の部屋を見回して言った。
「それでも、こまごました物は結構出てくるものなのよ」
 歯ブラシだとかスリッパだとか…、箸に茶碗にマグカップ…。
「急に居なくなられちゃうと心の準備が出来ないじゃない?残された物を見つけると、不意を突かれたりするのよ」
 そう言いながら、母は勢いよく机の引き出しを開けた。
「私はクローゼットを片付けちゃうから、あんたたち、机周りをお願いね」
 パタパタとスリッパの音を立てて、母が部屋を出て行く。
「…やっぱり、寂しいもんなのかね」
 姉がポツリと言った。

 幾らかの文房具に新聞記事のスクラップ帳、住所録は会社関係の人たちが主だった。
 小さな本棚には実用書ばかりが並んでいたが、隙間の方が多い。
 密かに綴っていた日記帳でも出てくれば面白いと思っていたが、それらしきノートは出てこなかった。
 味気なさにがっかりしかけた時、姉が「あ…」と声を上げた。
「どうしたの?遺書か何かあった?」
「ほら、これ…」
 姉が見つけたのは、小さな数冊のアルバムだった。
 写真店で現像すると、サービスでつけてくれる冊子状のアルバム。
 開くと、姉の子供の写真が、成長順にきちんと並んでいた。
 姉が母宛てにメールで送っていた写真のデータを、プリントしたものらしい。
 実家にはパソコンもプリンターもないから、写真店に持ち込んだのだろう。
「お父さん、どんな顔してこれを見ていたんだろうね…」
「私、お父さんは子供が嫌いなんだとずっと思ってたよ」
 姉は気が抜けたように笑った。
 そういえば、私たちのアルバムもそれぞれ、きちんと整理して取ってある。
 そのアルバムの中には、父が写っている写真はほとんどない。
 父が撮っていたのだから当たり前だ。
 当たり前のことを、今まで忘れていた。

 アルバムがしまってあった引き出しから、分厚い時刻表が出てきた。
 今年三月号の『文字の大きな時刻表』だった。
「時刻表なんて久しぶりに見たね」
「今はアプリがあるからね」
 へそくりでも挟まっていないかと、薄い紙のページを繰る。
 母が「お茶にでもする?」と顔を出した。
「あら、時刻表?」
「うん、結構新しいのだよ。お父さん、どこか行く予定だった?」
 そんな予定、聞いてないけれど…と、毋も覗き込む。
 端を折り曲げたページが何箇所かあった。
 小海線、吉備線、五能線、只見線。
「…あ」
 今度は母が声を上げた。
「これ全部、ローカル線…」
 母が毎週見ているテレビの旅番組で紹介されていたのだと言う。
「こんな風に、のんびり旅にでも行きたいわねって言ったのよ。
 お父さん、新聞読みながらアアだかウウだか言うだけだから、どうせ聞いてないんだろうと思ってたの」
 よく見れば、「待ち27分」などという書き込みもある。
「…お母さんと行くつもりだったのかな」
「お母さん、何にも訊かれてないわよ?
 二人で行くなら、『どこに行こうか』とか相談してくれればいいじゃないの。
 私、いくらのんびり旅でも、なぁんにもない場所なんて嫌よ?行くなら美味しいもの食べたいじゃない?
 いつもいつも、黙って勝手に決めちゃうんだから…」
 母が、スンッと鼻を啜った。
 姉が黙って、ティッシュを差し出す。
 窓から入り込んだ風が、私の膝の上の時刻表をパラパラとめくった。

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子供の頃、時刻表の読み方が分かったとき、「これで日本全国どこへでも行けるんだ!」と興奮したことを覚えています。
今はスマホのアプリを使えば、あっという間に接続から運賃から、全部導き出してくれますものね。
東京の地下鉄の乗り換えなんて、アプリなしではとても無理。
恩恵に与りながらも、時刻表の活字(独特ですよね)がちょっと懐かしくなります。
父親が持っていたので、のぞいてみました。


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先日、学生時代からの友人たちと小さな旅をしました。
奇祭・御柱祭で有名な、諏訪の諏訪大社を巡る旅。
諏訪大社は、諏訪湖を挟んで南岸に上社(本宮・前宮)、北岸に下社(春宮・秋宮)があります。
大変なパワースポットということですが、不信心な我々は特に願掛けするわけでもなく、ただただ厳かな雰囲気を味わってきました。
この立派な木は、春宮にありました。

この旅に集まった5人中4人は、すでにお父様を亡くされています。
私だけ、父健在。
「大事にしないと!」と口々に諌められました。
そう言われましても…。
なかなか、馬が合わないんですよねぇ。
…なんて思いながら、作り話を書いてみました。



 

 

by bowww | 2018-10-08 23:08 | 作り話 | Comments(0)

うろこ雲(秋分)その2

 カンナちゃんのお誕生日会に呼ばれた。
 可愛くておしゃれで、勉強ができてスポーツも得意。
 カンナちゃんはクラスのアイドルだった。
 そんな子に招待してもらったのが嬉しくて、私はすぐに「うん、行くね」と返事をしてしまった。
 家に帰ってから、同じ日にカズちゃんと遊ぶ約束をしていたことを思い出した。
 カズちゃんは少し前にカンナちゃんと喧嘩して、今度の誕生日会には呼ばれていないらしいということは何となく知っていた。
 私はぐずぐずと迷った挙げ句、前日になってカズちゃんに、「ごめんね、明日用事ができた」と言って約束をキャンセルした。
 カズちゃんがどんな顔をしたかは覚えていない、並んで歩いていたから。
 でも、カンナちゃんの誕生日会で、とても居心地が悪かったことははっきり覚えている。
 せっかくのご馳走もケーキも、美味しいとは思えなかった。
 その日から、カズちゃんと遊ぶことは減った。
 中学校でクラスが別々になってからは、喋ることもほとんどなくなった。


 学年別の綱引きや大玉送り、全体ダンスと競技が進み、いよいよ結菜(ゆな)たち一年生のかけっこが始まった。
 私は体育が苦手だったし、運動会が嫌いだった。
 特に、かけっこで順番を待つ間の緊張感、よーいどん!のピストルの音、思い出すだけで心臓がばくばくする。
 結菜も私に似て、運動神経はあまり良くない。その上、性格ものんびりしているせいか、いつも出遅れる。
 綱引きは綱を引くというより引きずられているだけだし、大玉送りでは大玉に触ることもできない。
 全体ダンスはワンテンポ遅れている。
 救いは、本人はあまり気にしていないらしいということか。
 結菜たちのグループがスタート地点に並んだ。
 パンッ!というピストルに合わせて、同じぐらいの背の子供たちが一斉に走り出した。
 結菜は一番外側のコースだ。
 なかなかのスピードで走り出したのだが、カーブで上手く曲がりきれず、大きく膨らんで順位を落とした。
 結局は五位でゴール。私を見つけて嬉しそうに手を振って、先生に注意されていた。
 まぁ、本人が楽しいならそれでいいのだけれど…。
 やれやれ、と気が抜けたところで肩を叩かれた。
「やっぱり三橋だ、久しぶり!」
 陽太(はるた)君だった。
 陽太君も人気者だった。
 面白くて勉強ができて、正義感が強い。女子にも男子にも優しかった。
 小学生のころは私の方が背が高いくらいだったのに、今では頭一つ分、大きい。
 ボーダーのTシャツにチノパンというラフな格好も清潔感があって、きっと今も好感度は高いのだろう。
「さっき山田から、三橋が居るって連絡もらってさ、探してたんだよ。
 そしたら、三橋によく似た女の子が走ってるのを見かけて、もしかしたらと思ったんだ」
「そんなに私に似てた?」
「似てる似てる!あののんびりした感じ、三橋の子供の頃にそっくりだよ」
 思わず溜め息が出た。
 私は結菜よりは、しっかりしていたと思うのだけれど…。
「陽太君のお子さんも一年生なんだって?」
「そうそう、下の子ね。上は五年生」
 木陰に移動して、お互いの近況を簡単に話した。
 陽太君は大学を卒業してすぐに、地元の企業に就職したという。
 友達が多い彼らしく、今でも同級生たちと連絡を取っているらしい。
「そうだ、和音(かずね)、覚えてる?」
「…カズちゃん?」
「そう、あいつ、三橋と会いたがってたよ」
 私は少し身構えた。
「会いたがってた、というか、『謝らなきゃ』って」
 意外な言葉に、首を傾げる。
「三橋の自由研究を盗んじゃったんだってさ」


 夏休みの宿題は、自由研究が一番大変だった。
 まずテーマを決めるのが一大事。あまり大き過ぎるテーマは、夏休みの間に調べきれない。
 かと言って簡単過ぎると格好悪い。
 五年生の夏休み、私は身近な薬草を集めることにした。
 たまたま読んだ本に、オオバコやタンポポといった雑草も、実は薬になるのだと書いてあったからだ。
 図鑑で調べて、目ぼしい植物を採ってきて押し花や押し葉にすれば、それなりの「自由研究」になる。
 二学期の始業式、私は研究結果を持って、意気揚々と学校に行った。
 …ことは覚えている。
「和音も薬草を集めたんだって」。
 思い出した。
 カズちゃんの自由研究は、確か何かの賞を取ったのだ。
 カズちゃんの標本は、とても丁寧に仕上げてあった。
 大きな模造紙には、その植物の分布場所や効能などが細かく記されていた。
 同じテーマでも出来映えの差は歴然で、私は素直に「カズちゃんはすごい」と思った。
 陽太君の説明によれば、自由研究のテーマが思いつかなかったカズちゃんが、私の真似をしたのだという。
 それなのに、自分の方が賞をもらってしまった。
「それがずっと、気になってたんだってさ」という陽太君の言葉を聞きながら記憶を辿る。
 私がカンナちゃんの誕生日会に行ったのは、五年生の秋だったと思う。
 つまりお互い、ほぼ同時に、罪悪感を抱えていたということになる。
「そんなこと…。私の方こそカズちゃんに謝りたいことがあって…」
 ふと気づく。
 陽太君は、なぜそんなにカズちゃんのことを知っているのだろう。
「じゃあ、二人で話してみたら?」
 私の怪訝そうな顔を面白そうに見守っていた陽太君は、スマホを取り出して誰かに電話を掛けた。
「あ、俺。
 三橋、ちゃんと覚えてたぞ。
 俺が戻るから、こっちに来たら?」
 電話を切って、にやりと笑う。
「かみさん。呼んだから」

 グラウンドでは玉入れが始まっていた。
 結菜は、玉をやっと拾ったと思ったら、そのままぽかんと上を見上げている。
 無数の赤い玉が、籠を目がけて空に放物線を描く。
 真っ青な空に、綿細工のようなうろこ雲が流れる。 
「八重ちゃん!」
 懐かしい声が聞こえた。


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うろこ雲、ではありませんが、久しぶりの青空。昨日の秋分の日の空です。
運動会の思い出を書きたくて書き始めたお話です。
ほんと、私も運動会が嫌いでした。
台風が来て中止になればいいと、毎年祈っていました。
でも、不思議と、運動会の思い出は青空なんですよね。ぱっか〜んと高く澄んだ青空。
不謹慎な祈りは通じなかったんでしょうね。


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夏のお楽しみは、NHKラジオの「夏休み子ども科学電話相談」でした。
今年は特にユニークな質問が多かったような気がします。
「恐竜の肉は美味しかったんですか?」「鳥人間になったら(飛べるから)遅刻しなくなりますか?」などなど。
それに答える先生たちもとても素敵です。
ラジオのワクワク感を引きずったまま、上野の国立科学博物館の「昆虫展」を見てきました。
知らないことを知るのは楽しいです。
…身につかないのが困りものですが。



パソコンで、エキサイトブログの写真が見られない状況が続いています(改善する気力が。。)。
自分のブログの写真も見られないため、すっかり気持ちが萎えてしまって、皆様のブログにお邪魔することさえせず、失礼しております。


 
 

by bowww | 2018-09-24 20:12 | 作り話 | Comments(0)

うろこ雲(秋分)その1

 こんなに狭くて小さかったっけ。
 娘の入学式で訪れた母校は、遊園地の作り物のようだった。
 校舎や校庭、遊具、下駄箱。私が小学生だったときから使っていた物たちが(考えてみれば、学校は意外と物持ちがいい)、おもちゃのように小さく見える。
 真新しいランドセルを背負って、緊張で頬を赤く染めている娘を見下ろして、そうだ、私が大きくなってしまっただけなのだと思い直す。
 大学に通うために実家を離れ、そのまま就職した。
 同僚と結婚して娘が生まれ、なんやかんやで離婚した。
 地元に戻って、幸い、良い転職先が見つかり、実家近くのアパートで娘の結菜(ゆな)と暮らしている。
 母娘の二人暮らしも、家族に助けてもらいながらようやく落ち着いてきた。

 小学校の中は、あぶら粘土のような、埃っぽいような匂いがする。
 午後に行けば、給食の残り香が混じる。
 あの頃は毎日、この匂いを嗅いでいたはずだ。
 授業参観や保護者会などで訪れる度に、その匂いを確かめる。
 今日は、週末にある運動会の打ち合わせだ。私は駐車場案内や会場整備の手伝いをする係になった。
 射し込む光に埃がチラチラと反射している。
 そこの廊下の角から駆けて来るのは、同じクラスのやんちゃ坊主たち。
 私はカズちゃんと、「男子!廊下を走ったらいけないんだよ!」と怒鳴る。
「そうだ、カズちゃんだ」
 ストッキングの足でスリッパを履いて、廊下を歩くのは難しい。
 ぺたぺたと無様な音を立てながら歩いていた私は、仲が良かった友達の名前を唐突に思い出した。
 隣の街の高校に進んでから、小中学校の友人たちとは自然と行き来がなくなっていた。
 カズちゃんはどうしているだろう。
 面倒見のよい、はきはきしたカズちゃんは、引っ込み思案な私とよく遊んでくれた。
 カズちゃんのおかげで、乱暴者のヤマダ君、ガッ君にもからかわれなくなった。
 人気者のカンナちゃんやハルタ君とも話せるようになって…。
 カズちゃんを思い出したら、つるつると他の同級生たちの名前と顔が出てきた。
 同時に、カズちゃんを裏切ってしまった、あの日の風景も甦る。
 懐かしい思いが引っ込んで、胸がぎゅっとなる。
 狭く感じていたはずの廊下が、急に広くなったような気がした。

 雨が続いて心配したが、運動会の当日は朝から見事に晴れた。
 結菜を急かして支度をして、私は一足先に学校へ向かう。
 駐車場が混雑する前に、車を誘導しなくてはいけない。
 「駐車場係」の腕章をつけて、決められた場所に立つ。
 まだ七時前だというのに、気の早い保護者たちの車が次々と入ってくる。写真やビデオ撮影のために、良い場所を確保したいのだろう。
「…三橋?三橋八重、だよな?」
 急に名前を呼ばれて振り向くと、三脚やらカメラやら大荷物を抱えた男性が立っていた。
「…山田君?」
「やっぱり!うっわ〜、すげぇ久しぶりだな」
 まん丸い顔をニコニコさせている。
 小学生の頃から体格のいい暴れん坊だったが、中学校に入ると、ちょっと質の良くない仲間と遊ぶようになったと噂に聞いていた。
 でもこの笑顔は、どうやらそこから建て直して、今は幸せなお父さんになったというところだろうか。
「いつ戻ったんだよ?同級生たちと会ってるか?」
 少し迷ったが、最初に言ってしまう方が楽かと思って、両方の人差し指で「バツ」を作った。
「これ一つ付けて、去年、こっちに戻って来たの。娘が一年生」
 山田君はニヤッと笑った。
「そかそか、バツ一個な。俺は二つだから、俺の方が上な」
 山田君に少し遅れて、奥さんらしき人がやって来て会釈した。
「で、三回目で落ち着いてるってわけ。うちは三人通ってるから、応援も大変なんだよ」
 また今度ゆっくり会おうな、と手を振って山田君は行きかけた。
 と、小走りで戻って来て、
「陽太(はるた)んところの子も、確か一年生だぞ。会ったら声かけてやれよ」と言い残していった。
 思い出したばかりの同級生が、ひょっこり現れた。
 おじさんになってもちゃんと分かるものだなと感心した後で、私自身もすっかりおばさんなのに、よくぞ見つけてくれたと感謝した。



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  …続きます。

 
 


by bowww | 2018-09-23 22:34 | 作り話 | Comments(0)