花散らし(清明)

 手のひらを出せと言う。
 戸惑いながら、左手をさし出す。
 両方、出せと言う。
 右の手のひらを、左に添わせる。
 ひら、と何かが触れる。
 冷たい柔らかさに、指がたじろぐ。
 しっかり受けろと言う。
 仕方なく、両手を器の形にする。
 ひら、ひらひら。
 ひとひら、ひとひら。
 わずかに発光する透明な欠片。
 受ければ、肌の上でしなりと緩む。
 ひとひらひとひらひとひらひとひら。
 両手の器に、小止みなく降り積もる。
 これは桜。
 無数の花びら。
 重なって重なって、白に滲む紅。
 溢れてしまいます。
 訴えても答えはない。
 仰げば曇天。


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小さな野の花たちが咲き、香りで梅に気づき、モクレンが霜に遭わないように祈り、やがて咲く桜を心待ちにする。
…のが、春なのに。
今年の春といったら!
野の花、水仙、梅、白木蓮、紫木蓮、辛夷、山茱萸、雪柳、連翹、木瓜、小彼岸桜、枝垂れ桜、ソメイヨシノ。
何もかも一斉に、ぶちまけるように咲いてしまいました。
初夏の陽気に、桜は開花2日で満開です。
ここの桜、あちらの桜と訪ね歩くのが楽しみなのに、とても追いつきません。
花々の狂宴に、呆然と立ち竦む思いです。
ただ、私の住む辺りでは今日が入学式という小学校が多く、満開の花の下、ピカピカのランドセルを背負った小さな子供たちをたくさん見かけました。
いいなぁ、桜咲く入学式。この辺りでは珍しい光景です。
思わず頬が緩みました。
楽しいことがいっぱいありますように。

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明日から週末にかけて、春の嵐が吹き荒れるようです。
花散らしの雨風ですね。





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by bowww | 2018-04-05 21:37 | 作り話 | Comments(0)


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