フラれた。
ほかに好きな人ができたって。 まぁね、ちょっと前からそうなんじゃないかな、って思ってたんだ。 彼女と別れて、そのまままっすぐアパートに帰る気にもなれなくて、ラーメン屋に行ってラーメン食った。 本当は餃子もつけたかったんだけど、バイト代が入るのが来週で、懐が寂しかったから我慢した。 フラれてもラーメンはうまいよなぁ…なんて思いながら、一人でラーメンを啜ったんだ。 さて、帰ろうと店を出たら、途端に猛烈に腹が空いてきた。 ラーメンで満腹のはずなのに。 慌ててコンビニに駆け込んだ。 スナック菓子やパン、ケーキにプリンにヨーグルト。 アメリカンドックも三本買った。 とにかく手当たり次第、目に入るもの全部を食べたくて仕方がない。 餃子を我慢した意味ないじゃんと思いながらも、有り金全部で買い込んだ。 アパートに戻って、まずポテトチップスの袋を開けた。 三分で完食。 次に生クリームが乗ったでかいプリン。 飲み込むみたいに二口で終了。 アメリカンドックはあったかいうちに食わなきゃ。 しょっぱいもの食べたら甘いもの、甘いもの食べたらまたしょっぱいもの。 エンドレスで食い続けたんだ。 …いや、マジで。嘘じゃないって。あ、悪い、聞いてるだけで胸悪くなりそう? …そう、「急性過食症かよ、俺」て。 でもさ、どれもこれも、すごくうまく感じてさ。 俺、なんだか嬉しくて泣きそうになって食ってた。 買って来たものを食い尽くしても、まだ腹が減っている。 どうしようかと部屋の中を見回した。 ちょうど、実家から米が届いたばかりだったから、それを炊こうと思いついた。 で、炊きあがるまでに非常食で買っておいたインスタントラーメンを三つ食った。 米を炊いてるとさ、甘い匂いがするじゃん? それを嗅いだら、腹がぐぅ…って鳴るんだよ。 いやいやいや、俺、おかしいだろ?って思っても、どうしようもないんだ。 で、生卵かけたり、ふりかけ振ったりして四合分を食べきった。 そうそう、熱々ご飯にバター乗っけて醤油垂らしてみ? うま過ぎて泣けるから。 米の飯が腹に納まったところで、ようやく満腹中枢が正常に機能したらしい。 空腹がピタッと治まった。 そしたら今度は、猛烈に眠くなってきた。 とても立っていられない。ドロドロに眠い。 這うみたいにしてベッドに潜り込んで、ひたすら眠った。 試験やゼミ発表が終わってて良かったよ。バイトも入れてなかったし。 時々、うとうとと目が覚める。 薄明るいけど、夕方なのか明け方なのか分からない。 すぐに閉じそうになる瞼を必死でこじ開けると、見慣れた部屋の景色が紗が掛かったように霞む。 また眠る。 次に目を開けると、もうすっかり周りが見えない。薄い布が何重にも重なっているみたいで、外の光がぼんやりと滲んでいる。 ああ、そうか。繭籠もりなんだ。 繭の中なら仕方がない。春まで待つしか仕方がない。 俺、特に疑問も持たずにすんなり寝てた。 「…で、そこにお前が来て起こしてくれたわけ」 沢口はそこで大きく伸びをした。 メールしても返信がない、電話にも出ない。 四日の間、音信不通だったから心配になって、沢口のアパートを訪ねた。 ドアを叩いても反応がない。 不安で半ばパニックになって、大家に頼んで鍵を開けてもらった。 ガクガクする膝で部屋に入り、掠れた声で名前を呼んだ。 ベッドの布団が、ごそりと動く。 「…おい、沢口…」 「…う〜ん」 さも気持ち良さげに伸びをするから、思わず思いっきり引っぱたいた。 外の寒い空気に晒してやろうと、沢口を部屋から連れ出した。 沢口は首をすくめながら歩いている。 ビル風が吹き抜ける。 「…あのさ、彼女のこと、すごく好きだったんだろ」 沢口は空を見上げた。 「…どうだろ。どうかなぁ。どうでしょ。ね?」 元々、つかみ所のない奴だから、「繭籠もり」の話もどこまで本当か分からない。 いずれにしても、失恋の度にこんな騒ぎを起こされたらたまらない。 次の沢口の恋がハッピーエンドであるように、友人一同で祈っている。 〜熊蟄穴(くま あなに こもる)〜 つい先日、市内で熊が出没しました。 もう冬眠している時期なのに。 やっぱりお腹が空いて眠れないようです。 来年はドングリがたくさん実りますように。 うんと寒くなったり、かと思えば、生温い南風がゴーゴーと吹いたり。 いつもの冬とはちょっと違うような気がします。 私の住む県は、今年は災害が多い年でした。 穏やかな新年を迎えられるように、祈るような気持ちでします。 …とはいえ、公私ともにドタバタドタバタ。 気ばかり焦る12月です。 海の旬は、ナマコなどなど。 山の旬は、春菊などなど。 5年前、母と松島や仙台に旅行に行きました。 仙台では、人にすすめられて調べておいた居酒屋さんを目当てに出掛けたのですが、まさかまさかの「臨時休業」。 私、このパターンが本当に多いのです。。 定休日なら自分のリサーチ不足なだけなのですが、わざわざ訪ねて行っての臨時休業。 母も仲の良い友人も、最近は諦め顔です。 ただ私、美味しいお店(特に飲み屋さん)を探し当てるのが得意なのです。 行き当たりばったりでも、勘と鼻でほぼ間違いなく良いお店を引き当てられるのです。 これまた、周りに有名(?)。 で、仙台でも探し当てました。 小さな小料理屋さん風のお店で、お造りも炊き寄せもとっても美味しかったのです。 母もご満悦。 そこで出して頂いたのが「ばくらい」という珍味でした。 お店の人に「なんですか?」と聞いたら、「海鞘(ホヤ)と海鼠腸(このわた=ナマコの内蔵)の塩辛ですよ」とのこと。 ホヤもナマコも初体験。 ドキドキしながら頂いたら、酒好きにはたまらない逸品でした。 震災後、あのお店はどうなったのかなぁ。 次回は12月17日「鮭魚群」に更新します。 本当は鮭=鱖と書きます。
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by bowww
| 2014-12-12 09:55
| 七十二候
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