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林檎の香のごとく(冬至)

 くしゃくしゃになった毛布とシーツをベッドから引き剥がす。
 残っていたぬくもりと香りが僕を包む。
 僕は立ち竦む。
 激しい感情に絡めとられ、思い知らされる。
 とっくに後戻りできない場所に居る。
 僕はのろのろとベッドに潜り込む。
 褪めていく香りを掻き寄せて、もう一度眠る。


君かへす朝の敷石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ   北原白秋

 
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写真は、冷え込んだ朝の窓ガラス。北向きの窓には氷の花が咲きます。
今年の12月は、気温の上り下がりは激しいものの、比較的穏やかなお天気が多かった気がします。
おかげで窓ふきなどの掃除も、楽に終わらせられました。
とは言え、寒さの本番は年が明けてから。雪の季節もこれからです。
北原白秋のこの有名な短歌は、愛誦性が抜群ですね。
道ならぬ恋の行方もさることながら、雪と林檎の香りの取り合わせの見事さにため息が出ます。
白秋の作品はどれも、粒選りの言葉が並んでいて宝箱のようです。

親しい友人が、少し大きな病気を抱えて入院しました。
本人よりも周りの我々の方がアワアワ動揺したものの、まずは治療の第一段階はクリア。
お見舞いに行って、変わらぬ元気さにホッとしました。
治療は緩やかな長期戦になりそうですが、彼女の健やかさならきっと大丈夫。
大袈裟なことを嫌がる人なので、鬱陶しがられない程度に応援し続けようと思います。

親しい人たちとも、いつかは必ず、なんらかの形でお別れしなくてはいけなくなります。
大切な人たちを大切にしようと、つくづく思います。
クリスマスやお年取り、お正月は、特にそんなことを思う季節なのかも知れませんね。



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by bowww | 2016-12-21 06:47 | 身辺雑記 | Comments(2)

華やげる(大雪)

 レンズの曇りが気になって眼鏡を外す。
 眼鏡拭き専用の布切れは、必要な時に限って見当たらない。
 辺りを見回し、着ているネルシャツの裾をパパッと払って、それでレンズを拭く。
 眼鏡を窓の方に翳し、汚れが取れたか確認する。
 年寄りじみた自分の仕草に苦笑いが漏れ、いやいや、もう充分に本物の年寄りだろうと、もう一度笑う。
 眼鏡を掛け直すと、少しだけクリアになった視界に、にぎやかな色の塊が飛び込んできた。
 孫が忘れていったマフラーだ。
 ローズピンクとベリーピンク、ラベンダー、白、黄色のチェック柄。
 手に取れば、外国のキャンディーの詰め合わせみたいなにぎやかさ。
 物心ついてから、こんな派手なものを身につけた覚えがない。
 気まぐれに、鏡の前でマフラーを巻いてみる。
 チンドン屋みたいと笑うつもりで鏡を覗くと、思わず「あら」と声が出た。
 我ながら、よく似合う。
 明るい色が反射するのか、表情が楽しげに見える。くすんだ肌もさほど見苦しくない。
 なるほどなるほど、年を取ったら明るい色の服を着ろというのはこういうことなのか。
 フワフワのマフラーに鼻先を埋め、そうだ、私はピンクの服がずっとずっと欲しかったのだと思う。
 子供の私が、胸の奥で嬉しそうに頷いている。
 

枯尾花夕日とらへて華やげる 稲畑汀子

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すっかりほほけた芒の穂が風に揺れていて、近づいてみると、日の光を孕んでとても綺麗だったのです。
このまま、光を含ませたままでおけたらいいのになぁ、寒いどんよりした冬の日なんかに取り出して、手の平で転がしたり、飾っておいたりできるのになぁ…などと妄想しておりました。
その後で見つけた稲畑さんの俳句です。
私が見た芒よりも、もっとぐっと激しい何かを秘めていそうですが…。
枯れてなお、光を纏う姿が愛おしくなります。


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師走、例年のごとくバタバタバタバタ、気忙しい毎日です。
自分の心のあたふたに引きずられてしまっています。
進歩ないなぁ…と反省してばかり。
落ち着いて一つずつ片付けていかなくては。
これは霧の朝に見つけた草の実。よく見ると、水滴がそのまま凍っていました。
思いがけず綺麗なものを見つけると、その日一日、楽しい気持ちでいられますね。

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by bowww | 2016-12-07 02:43 | 身辺雑記 | Comments(2)