カテゴリ:身辺雑記( 34 )

つかの間の青空

とてもとても久しぶりの青空と日の光。
せっかくなので、記念写真を撮っておきました。

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夜になって、気がつけばまた、雨音が聞こえてきます。


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by bowww | 2016-09-25 22:34 | 身辺雑記 | Comments(0)

ここはどこのみち(秋分)

「すぐ近くのお宮がお祭りなんですよ」
 風呂から上がると祭り囃子が聞こえてくる。
 夕飯の時間はいつがいいか聞きに来た仲居に尋ねると、そう答えが返ってきた。
 そういえば、宿の裏手にこんもりとした鎮守の森が見えていた。
「ちょっと覗いてみようかな」
 私の独り言に、中年の人の良さそうな仲居はちょっと困ったように目を伏せた。
「地元の者(もん)だけの地味な祭りだから…大して面白くないと思いますけど…」
 小さな山里の祭りだから、よそ者は歓迎されないのだろうか。
「行かれるんなら、暗くなる前に。
 あったかくなさってくださいね、だいぶ風が冷たいですんで」
 夕飯の前に戻ると伝えると、仲居は再び愛想の良い顔に戻って部屋を出て行った。

 仲居の言葉が少し気になったが、鄙びた秋祭りの風情を楽しむのも一人旅の醍醐味だと出掛けることに決めた。
 浴衣から服に着替え、念のためカーディガンを羽織る。
 湯上がりの頬に、夕暮れの風が気持ちよい。
 宿の裏に回ると稲刈り間近の田んぼが広がり、鎮守の森を抱え込むように山が控えていた。
 まもなく沈む夕日に照らされて、振り向けば自分の影法師があぜ道に長く伸びている。
 虫の声が喧(かまびす)しい。
 神社にたどり着いた頃には、参道の提灯や石灯籠に明かりが灯されていた。
 参道には大きな杉が連なり、辺りより一段と闇が濃い。
 境内に人が集まっているのか、大勢の笑い声が時々わっと届く。
 祭り囃子はいよいよ賑やかだ。
 釣られて、少し浮かれた気持ちで歩き出す。
 そのとき、一際強い風が吹き抜け、提灯が一斉に揺れた。
 ぐらぐら揺れる明かりが参道の脇の暗闇を照らす。
 深紅の帯。
 満開の曼珠沙華。
 道に沿ってみっしりと花が並び、延々と続いている。
 風が、濡れたように赤い花の群を渡る。
 たゆたゆと、細い花弁が震える。

 そういえば先刻から、誰も来ないし誰ともすれ違っていない。
 誰もいない。


  舂(うすづ)ける彼岸秋陽(あきび)に狐ばな
   赤々そまれりここはどこのみち   木下利玄


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短歌及び作り話と、写真がまったく合っていませんがご容赦ください。。

木下利玄の故郷(岡山)では、曼珠沙華のことを「狐花」と呼んでいたそうです。
「舂く」は夕日が山に沈もうとする状態、だそうです。
曼珠沙華=彼岸花、写真に撮ってみたいのですが、なかなか出合えないのです。
気がつくと、民家の庭先や田んぼのあぜ道に咲いていたりして、盛りも過ぎてしまっていて…。
おっかなびっくり、でも憧れの花です。

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我が家の紫陽花に住み着いたアマガエルを記念撮影。
もう1匹、玄関先の植木鉢に住み着いています。
この2匹のおかげか、今年は門灯の周りに蜘蛛の巣があまり張られませんでした。
夜ごと小さな虫たちを食べてくれていたようです。
寒くなる前にしっかり肥えて、冬を越して、また来年会えるといいなぁ。

台風と秋雨前線のせいで、もう何日もお日様と青空を見ていません。
稲刈りもストップしてしまって、農家の皆さんが困っておられます。
早くカラッとスキッと晴れてくれないかしら。
厳しい残暑から一転、火の気がちょっと恋しいほど肌寒くなりました。
周囲でも体調を崩す人が多くなっています。
私は、秋の美味しいものを食べたい一心で、体調管理に励んでおります。
季節の変わり目、皆様もご自愛くださいますように。

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by bowww | 2016-09-22 21:59 | 身辺雑記 | Comments(0)

白玉の…(白露)

「昼酒ですか?いいご身分で…」
 嫌みを不快に感じさせないのは、こいつの人柄だろう。
 勝手知ったるといった風情で上がって来ると、独り者の卓の上を覗き込む。
「肴はないんですか?酒だけじゃ毒ですよ」
「昨夜は寝てないんだ。一杯引っ掛けて眠りたい」
 頼まれた原稿の締め切りは疾(と)うに過ぎていた。
 さすがに観念して原稿用紙に向かったものの、一文字も筆が進まない。
 それでも明け方近く、物語の糸が指先を掠めた。
 藁にもすがる思いでその糸を手繰り寄せ、どうにかこうにか物語が動き始めたところだった。
「君の方こそ、昼間っからぶらぶらしてて大丈夫なのか」
「私は先生が心配で寄ったんですよ。行き詰まったまま、いつ出奔するかと気が気じゃない」
 そう言うと彼は、今度は散らかった文机を覗き込んだ。
「おや。やっと始まった」
 私は背中で彼の気配を感じながら、湯呑みに酒を注ぐ。
 紙をめくる乾いた音が聞こえる。
「…なるほど」
 カサカサと原稿用紙を束ね、トントンと整える。
 特に感想は言わない。私も聞かない。
 彼はそのまま台所に向かうと、何やらゴソゴソし始めた。
 やがて香ばしい匂いがする一皿と、湯呑みをもう一つ抱えて戻ってきた。
「先生、何を食べて息してるんです?米櫃は空っぽだし、台所中探して揚げ一枚っきりですよ」
 その残り物の揚げに味噌を塗って炙ってきたらしい。
「どれ、ご相伴」
 酒瓶を掴み、自分の湯呑みに注ぐ。
「酒だけは上等ですね、いつも」
「うるさいな、不良学生め」
 私の悪態に、機嫌の良い笑い声が返ってきた。
 畳に落ちる明るい陽射しが目に痛い。
 土間の隅で、蟋蟀が一節鳴いた。

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若山牧水は酒と旅の歌人。
…というより、どうやらお酒依存症だったようですね。
  白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒は静かにのむべかりけり
有名なこの短歌はとても素敵ですが、
  かんがへて飲みはじめたる一合の二合の酒の夏のゆふぐれ
という歌を読むと、牧水の心の奥を思わずにはいられません。
暗い淵を覗き込むような独り酒です。
飲まずにはおれない人だったのでしょうね。
お酒、好きです。
若い頃は、「鉄の肝臓を持つ女」と持ち上げられ(?)、調子に乗ってよく飲みました。
年を重ねれば、当然、鉄の肝臓も錆び付きます。
今では美味しいお酒を、美味しい食べ物と、大好きな人たちと一緒に、程よく頂くときが至福です。
晩酌は日本酒。小さなグラスに一合の半分だけ、と決めて飲むのが楽しいのです。
日本酒は、春夏秋冬全国各地、みんな違ってみんな旨い。
一日の終わりに、少しのお酒で、ふんわり良い気持ちになる時間が大好きです。
9月9日は「ひやおろし」(前年の冬に醸造した後、春夏と熟成させてから出荷するお酒)の解禁日。
行きつけの酒屋さんのケースが、一気に秋めく楽しい季節です。


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田んぼが日に日に金色を増し、稲が熟れていく甘く乾いた匂いがします。
所々には、真っ白なソバ畑。小さな可愛らしい花が満開です。新蕎麦の季節はもう少し後です。
実りの秋…とはいうものの、手放しで喜べないお天気が続いていますね。
台風が次々とやってきて、東北から北海道は大変な被害が出ています。
その影響か、残暑もジメジメ続いています。
どうか穏やかな秋が、早くやってきますように。

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by bowww | 2016-09-07 11:52 | 身辺雑記 | Comments(2)

目にはさやかに見えねども(処暑)

パソコンのディスプレイから、ふと目を上げる。
雷?いや、花火の音?
そうだ、今夜は市街地の花火大会だった。
ブラインドを上げる。
光の玉がいくつも空に駆け上り、ふと暗闇。一瞬のちに開花。
赤、青、緑、金の光。
無造作なようでいて緻密な図形を夜空いっぱいに描いて、再び暗闇。
そこでやっと、音が追いつく。
残業の手を止めて、光と音がばらばらに届く花火を眺める。
何年もここで働いているのに、これほど街の花火が見えるとは知らなかった。
後ろで同僚が、「花火はやっぱりビール片手に見たいよな」とぼやく。
まったくだと思う。
あの花火の下では、家族連れや仲間同士、カップルが楽しげに空を見上げているのだろう。
その賑わいまでは届かない。
窓ガラスに映るオフィスには、私を含めて三人しか残っていない。
細かい作業で軋むように痛む目を、遠くの花火で休ませる。
一際大きな金色の花火が、五つ六つと続けざまに上がる。
散らかった火の粉の一つ一つが瞬くように輝いて、夜空に吸い込まれていった。
チリリ…リリリ…。
金の鈴の音が聞こえた気がした。
「一色(ひといろ)だけの花火もいいもんだな。なかなかシックだ」
窓ガラスには、私と並んで腕組みをした先輩が映っていた。
「…そうですね。今のは散り際も良かったですね」
「お、次もでかいな」
先輩は上機嫌で続ける。
「女の子はさ、浴衣で二割増し、花火を見上げる横顔で三割増し。つまり浴衣着て花火大会に行けば、合計五割増し可愛く見えるんだぞ」
「それはかなりポイント高いですね」
「だろ?お前も気になる奴がいたら、花火大会に誘え」
私はガラスに映る先輩を睨みつけた。
「…先輩を誘うつもりだったんですよ。浴衣も買っておいたのに」
先輩がちょっと俯いた。
「…悪かったな」
私の頭を軽くポンと叩いて、先輩は消えた。
死んでからも、言いたいことだけ言って去っていく。
相変わらず勝手な人だとため息をついてから、思わず笑った。

光の玉がいくつも空に駆け上り、ふと暗闇。一瞬のちに開花。
赤、青、緑、金の光。
再びの暗闇。


  死にし人別れし人や遠花火  鈴木真砂女


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半分だけ実話です。

花火大会に行ったことがありません。
人混みが苦手な両親(特に父親が短気で、混雑した場所が大嫌い)に育てられたせいか、大きなイベントや遊園地などにはほとんど行った記憶がないのです。
そのため、混雑するというだけで行く気が失せてしまう人間になってしまいました。
若いときは、多少ムチャをしても賑やかな場所に行くべきだと、今になって思います。
「花火」=打ち上げ花火は本来、秋(初秋)の季語だったようです。
一方、「手花火」は夕涼みに合わせて晩夏の季語。
でも最近は、「花火といえば夏真っ盛りでしょ!」という人も多くて、夏の季語とする歳時記も増えているとか。
季節の感じ方は移ろっていくものですよね。

  夜は秋のけしき全き花火かな  加舎白雄


夏はお盆があるせいか、亡くなった親しい人たちが特に懐かしく思い出されます。
祖父祖母伯父伯母に、お世話になった方々。
もっと優しくすれば良かった、もっと恩返しするべきだった、もっと話したかった、もっと、もっと…。
懐かしさや感謝の気持ちに、「もっと」という小さな後悔も混じります。
大切な人を大切にしよう。
年を重ねるほど、しみじみと思うようになりました。
山国の夏は、鉄鍋を空焚きするようにじりじりと暑いけれど、あっという間に過ぎ去ります。
すっかり秋の気配。
太平洋側から北海道にかけて、台風が大暴れして過ぎていきました。
どうか今年はこれ以上、大きな被害が出ませんように。


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by bowww | 2016-08-23 22:52 | 身辺雑記 | Comments(4)

猛暑お見舞い申し上げます(立秋)

…ああ、まただ。
子供の頃から、繰り返し見る夢がある。
妹が僕を捜している。
僕には兄しかいない。
それなのに、夢の中の妹は確かに僕を捜しているし、僕はそれを知っている。
人っ子一人居ない百貨店で、学校で、マンションで、遊園地で。
僕を捜している。
華奢な背中の真ん中まである髪は、緩くふんわり波打っている。
髪を飾る深紅のリボンだけが、色褪せた風景の中で鮮やかだ。
「お兄ちゃん、どこ?置いていかないで」
澄んだ声が悲しげに響く。今にも泣き出しそうだ。
ここだよ、ここにいるよ。
呼ぼうとしても声が出ない。足が動かない。
腕だけが、もどかしく空(くう)を掻く。
ふと気がつく。
僕は、妹の顔を見たことがない。
首筋にひんやりとした風が触れる。
僕は息を潜める。
少女は足を止めた。
あれは誰だ?
少女はゆっくりと首を傾げている。
僕は後じさりしながら、でも、深紅のリボンから目が離せない。
「お兄ちゃん!」
少女の声が、嬉しそうに弾んだ。

目が覚める。

ねっとりとした汗が頬を伝い、胸を伝う。
目の奥がじくじくと痛い。
少しだけ昼寝をするつもりが、寝過ごしたらしい。窓の外は暮れ始めている。
見ている間に、隣家の庭のカンナががくりと首を垂れた。


   あかくあかくカンナが微熱誘ひけり  高柳重信

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暑い立秋となりました。
日本全国、猛烈な暑さが続いていますね。
今年は例年よりも梅雨明けが遅かった上に、なんだか湿気がいつまでも居残っているようです。
今日の夕方の空は、熱を孕んだような色でした。
この辺りは普段なら、もう少しカラッと暑くなるはずなのに。
それでも、今日は一日、窓もカーテンも開け放ったままにしておきました。
部屋を熱い風で漂白した気分。

夏はどうも、押しが強い生命力いっぱいの花が多いような気がします。
カンナ、ケイトウ、サルビア、マリーゴールド、ヒマワリ、サルスベリ、キョウチクトウなどなど。
涼しげな朝顔は、朝のうちに萎れてしまいますし。
強い陽射しに負けないように咲いていれば、自然と強気な花になっていくのでしょうね。
ちなみにカンナは、秋の季語だそうです。

暑い暑いといいながらも、夜になれば風が少し涼しくなります。
あんなに大合唱をしていた蛙はすっかり鳴りをひそめ、気がつけば虫の音に変わっています。
本当の秋が来る前に、スイカや桃、プルーンに葡萄をたっぷり食べておかなくちゃ。
毎夏、山盛りのかき氷に憧れるのですが、職場の冷房がとてもキツくて冷たい物を食べる意欲が萎えてしまうのです。
冷えた果物がちょうどいい。
キュウリに茄子、インゲン、枝豆、トマト、ズッキーニ…と夏野菜も大好きです。
夏は気がつけば、にわかベジタリアンになってしまいます。
キリギリスじゃあるまいし、肉や魚を食べなくちゃいけないとは思うのですが…。
でも、唯一食べたいと思う鰻は、あまりに高級品になってしまって、なかなか口に入らないんですよね。
鰻の完全養殖が早く実現しますように。

残暑は厳しく、長引くようです。
皆様も、どうぞご自愛くださいますように。

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by bowww | 2016-08-07 22:52 | 身辺雑記 | Comments(4)

梅雨明け、いつ?(大暑)

寝ても覚めても 同じ空
千回万回 日が巡り 月が満ち 星が逝く
崩れてなお
褪せぬ夢

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二千年前の青空蓮ひらく   太田土男


一昨年の蓮畑が、ぐんとスケールアップしていてビックリ。
みっしりと見渡す限りに蓮の花…と言いたいところですが、日がだいぶ西に傾いた頃に行ったため、当然、花は閉じていました。
キュッと堅く閉まった蕾たちが夕風にフラフラ揺れて、大きな葉がガサコソと騒いでいました。
畦道を歩けば、人影に驚いたカエルたちが一斉に水に飛び込みます。
一際大きな水音がするのはトノサマガエルですね、きっと。
ランドセルを背負ったままの男の子が、近くの水路で何やら捕まえようとしていました。
こちらに気がつくと、ちょっときまり悪そうな顔をして駆けていきました。
帰り道で道草を食っている子を見かけることも、最近はめっきり少なくなりました。
塾や習い事で忙しかったり、親御さんが心配して車で送り迎えしたりと、寄り道する暇もないのでしょうね。
子供たちはもうすぐ夏休み。
今、あれだけの休みが欲しいとは思いませんが(長期休暇を取ったら、きっと二度と社会復帰できない。。)、夏休みが始まる直前のワクワク感はもう一度味わいたいです。
予定があってもなくても、何か楽しいことが待っているような気持ちになれました。

夏を思うとき、色々な匂いが蘇ります。
雨が叩く草やアスファルトの匂い、田んぼの澱んだ水の匂い、プールの消毒用塩素の匂い。
昨夜の蚊取り線香の残り香、虫除けスプレーの匂い、スイカの匂い、かき氷のシロップの匂い。
シッカロールの匂い、お祭りの屋台の食べ物の匂い、花火の匂い。
ほかの季節よりも、匂いの記憶が鮮明なのは何故でしょう。
どの匂いも楽しげでワクワクするのに、どこか切ないですね。


グズグズした曇り空と湿った風が吹く日が続きます。
「降るならさっさと降れ!」と、空を見上げて悪態を吐いています。
九州地方などは被害が出る程の大雨なのに、こちらは雨不足の梅雨。
人の都合で変わる空模様ではないことぐらい重々承知していますが、それでももう少しだけ、優しくしてはくれないかなぁ。
カラッとした夏空が待ち遠しいです。
…と言った口で、梅雨が明ければきっと、暑い暑いと文句を言うのでしょう。
こんな不心得者ばかりだから、お天道様がへそを曲げるのかしら。


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by bowww | 2016-07-22 08:39 | 身辺雑記 | Comments(0)

おもちゃレンズ(小暑)

「寝床の中で煙草飲むのはやめとくれ」
 女の声が嶮を含む。
 男は布団をのそりと這い出て、窓際にしゃがみ込んだ。
 簾越しに、部屋のすぐ下の溝(どぶ)を眺める。
「…おう、止んだな」
 昨夜からの雨は上がった。
 溝の水面は、流れがあるのかないのかてろりと静まり返っている。
「…まだ早いだろ。もすこしだけ、いいだろ」
 女は男に背を向けたまま呟く。
 男が店に上がった夜は、女は子供のようにはしゃぐくせに、明け方になれば決まって不機嫌になる。
「そうでもないぜ。東の方は白んできやがった」
 まもなく烏が騒ぎ出す。
「…ふぅん」
 女も起き出て窓に凭れ掛かり、男に煙草をねだった。
 簾を上げると、ぬるい風が吹き抜けた。
 昨夜、二人で飲み散らかした銚子や猪口は、いつの間にか部屋の隅にこざっぱりと片付けてあった。
「おい、明日の観音様の祭り、冷やかしに行こうじゃねぇか」
 女はちらりと男を見遣ると、唇の端で笑った。
「去年も一昨年(おっとし)もそう言ったじゃないか」
「今年はほんとさ」
「やめとくれやめとくれ」
 女は右手をひらひら振った。
 ほの暗い部屋の中、大振りの花のように見えた。
「できない約束は嫌いだよ」
 背けた顔に夜明けの弱い光が落ちる。
 白粉と紅が剥げ落ちた女の顔は、夜よりもずっと子供じみて見える。

    短夜のあけゆく水の匂かな 久保田万太郎



ほんの少しだけ、思いつきのスケッチみたいな作り話。
夏至を過ぎれば日は短く、夜は長くなっていくのですが、まだまだ気分は「夏の短夜」ですね。
今年は梅雨の最中から猛烈な暑さ。
これが9月まで続くのかと思うと、すでにバテそうです。。

スマホのカメラに取り付けるレンズを買ってみました。
広角・魚眼・マクロの3つのレンズがセットで1500〜2000円という玩具のようなお値段。
本格的なカメラのレンズは桁違いのお値段ですものね(レンズ地獄という言葉もあるそうな)。
私にはおもちゃレンズで十分♪とウキウキしながら取り寄せました。
が。
マクロレンズのあまりのマクロっぷりに、ちょっとビビっています。。
ピントもなかなか合わないし、おもちゃだなんて、侮ってごめんなさい!

こんなに小さな貝殻(比較のため、指輪と並べてみました)が、
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こんな風に撮れます。ピントが甘いですね。。
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魚眼はこんな感じ。
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広角レンズで撮った夕方の写真。
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もっと使いこなせるように頑張りまっす。

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by bowww | 2016-07-07 11:41 | 身辺雑記 | Comments(4)

二つの展覧会 (夏至)

作り話は暫く放置。
細々と身近な出来事を書けたらいいな、と思っています。
今回は4〜5月にかけて足を運んだ展覧会のお話です。
…タイミングを全く逸してしまったのはご容赦ください。。


まずは5月に伺った写真のグループ展。
「自由な発表 ゆたかな交流」と銘打ち、11人の方々が作品を持ち寄って開く「我風展」です。
今年で4回目、回を重ねるごとに参加者が増え、内容もより一層豊かになっていくようです。
モノクロ、カラー、人物、風景、静物…と、テーマもテクニックも多種多彩。
主宰は、こちらでご縁を頂いたhiyoさん。
hiyoさんの求心力の賜物だと思うのですが、これだけ個性豊かな方々の集まりなのに、印象がガチャガチャとならないのです。
作品たちが、互いを尊重し合いながらも、伸び伸びと楽しくお喋りしているような雰囲気。
作者の皆さんが日替わりで会場に居られて、来場者とコミュニケーションを取られていたせいもあるとは思うのですが、閉じられていない風通しの良さを感じました。
職場の同僚が二人参加していて、彼と彼女の「素の部分」を覗き見るというちょっと悪趣味なワクワクも楽しみました。
そしてもちろん、hiyoさんとお会いできることもワクワク。
今年も素敵な笑顔と、あたたかな言葉のパワーをプレゼントして頂きました。
来年の我風展の進化が今から楽しみです。
hiyoさんが丁寧に書かれた我風展レポートはこちらです→我風展オフィシャルサイト

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そして4月の末に母を連れて行ったのが、猛烈な人出で話題になった「生誕300年 若冲展」(於・東京都美術館)です。
週末や会期末になると、会場に入るまで3〜5時間、会場内は殺気立つほどの混雑だったようです。
私は始まって一週間の平日、午後2時過ぎを狙って行ったため、40分程度で入場できましたが、それでもかなりな賑わいでした。
お目当ての絵の近くになんて、なかなか寄れません。
で。
上野駅に着いたらすぐ、近くのヨドバシカメラに飛び込み双眼鏡を買いました。
単眼鏡レベルの焦点距離50センチ〜という優れもの(予め調べていったのです)。
展示会場で双眼鏡なんて…と思うなかれ、若冲の超絶技巧をこの目で確かめたいじゃないですか。
結果、大混雑の中で私なんぞを気にかける人なんていませんし、数多の頭越しでもちゃんと超微細な筆跡を観察することができて大満足。
これからは美術展のお供にしようと思います。
さて、展示内容。
若冲の絵を見ると、どういうわけだか嬉しくてたまらなくなるのです。
今回の目玉は、なんといっても「動植綵絵」30幅と「釈迦三尊像」3幅が一堂に会するという豪華絢爛な展示室。
難しいことは抜きにして、そこに居るだけで、ただただ美しいもののパワーに打ちのめされます。
たぶん私が展示会に行くのは、「もの凄いもの(美とか技法とか作者の思いとか…)」に、完膚なきまでに圧倒される快感を味わうためなのだと思います。
ミーハーな鑑賞者ですが、行って良かった。

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ふと、色々な場面で「あれ(あの人)は嫌い、これは趣味じゃない、それは興味ない」と決めつけていることに気がつきました。
若い頃はそんな心の動きを、何か価値のある「こだわり」と思い込んでいました。
でも、そんなこだわりは自分を狭めてしまうだけですね。
トシを取れば取るほど、心はゴワゴワ強張ってしまいます。
食わず嫌いは損。
肝に銘じて、今までは見向きもしなかった(もしくは見ぬフリをしてきた)ことも面白がりながら齧ってみたいと思います。

…でも、最終的には「夏痩せて嫌ひなものは嫌ひなり(三橋鷹女)」ですけれど。



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by bowww | 2016-06-21 11:04 | 身辺雑記 | Comments(2)

日脚

「春隣」という季語が好きです。

…という話題も、すっかりタイミングを逃してしまいました。。
先日、作り話を更新した際に、書きそびれていた呟きです。
写真は春隣の頃に訪れた、古本屋&カフェの「想雲堂」さんです。
以前からとても気になっていたお店で、先日初めてお邪魔しました。
本を読みながらコーヒーを飲んだり、夜はお酒が飲めたりするカフェです。
本に囲まれて、ゆっくり時間を過ごせる素敵な空間でした。

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「春隣」は冬の季語ですね。
気温はまだ寒いし、雪も当たり前のように降る。けれど、陽射しは確実に力強さを増している季節。
「春近し」などと同様の意味なのでしょうが、独特の温度感のようなものが好きです。
寒さでかじかんでいる肩先に、ふと温もりを感じるような。
丸まっている背中を、そっと撫でられるような。
気づくと、明るい光が背中合わせで寄り添ってくれている感じ。
私の住む辺りは、寒さが厳しい土地柄です。
「北海道の○○市より寒かったじゃん!」と驚くような最低気温も記録されたりします。
だからこそ、春の兆しに敏感になるのでしょうね。
立春を過ぎて、陽射しの強さに驚かされます。
まだ残っている雪に反射するせいで、明るさ倍増。
屋根の雪が溶けて滴りの音が盛んにし始めると、もう春です。
…とはいうものの、明日の予想最低気温は氷点下8℃。実際はもっと下がるでしょう。
春の女神はツンデレです…。


少し前に、とっても久しぶりに雑誌を買いました。
表紙の少女の清楚なスタイルと、「シックであること」というテーマに吸い寄せられて。
人は自分に足りないものを求めるのであります(故に、「整える」とか「断捨離」、「丁寧な暮らし」とかという言葉にも弱い。「いつまでも美しい人」なんていう台詞にはイチコロ)。
シンプルで上質な洋服やアクセサリー、日用品の紹介もとても素敵でしたが、「あなたが思う『シック』とは?」という質問に、センスが良い(と推察される)各界の方々が答えている特集が興味深かったです。
シック。
洗練?上品?大人っぽい?
漠然と憧れるフレーズです。
「大人の知的なセクシー」「成熟」などと、一言でずばりと言い切る人もあれば、「シックとは目に見えないことである。注目されたとき、シックは死ぬ。(以下略)」などと、まるで禅問答のような答えを提示する人もいました。
なかなか捉えどころがない、日本の「粋(いき)」とも似ているようで微妙に違う感覚なのですね。

「暮しの手帖」のエッセイ、「すてきなあなたに」が大好きでした。
1969年から続く人気エッセイ。それをまとめた単行本は全巻持っています。
もともとは祖父が母に買い与えたのですが、いつの間にか私のものになっていた1巻と2巻は、もう何度となく読み返しました。
やさしい清潔感溢れる言葉で、日々の小さな喜びや感動を「ちょっとお裾分け」といったふうに伝えてくれるエッセイです。
食べ物のお話も大好きで、ロイヤルミルクティーや桃のコンポート、缶詰の洋梨をジャム代わりに乗っけたトーストなど、真似をしては喜んでいました。
お洒落の仕方も、この本に教わりました。
形だけではないマナーも、この本で読めば素直に腑に落ちました。
著者の大橋鎮子さんは3年前にお亡くなりになったので、最新刊の6巻は複数の方が書かれた文章のようですね。

「すてきなあなたに」と同じ頃に読んでいたのが、遠藤周作の「狐狸庵シリーズ」。
「このおっさん、おかしな人だなぁ」とケラケラ笑ってしまうようなユーモア(下ネタも満載)に溢れていました。
実はキリスト教を題材にした、しごく重苦しい小説を書いている作家だと知ったのは、ずっとずっと後になってです。
今でも思い出すのは、その頃の奥さまたちのカルチャーセンター流行りを皮肉った文章です。
「少し昔はね、文化だ教養だなんて騒がずとも、お茶の飲み方一つで深い知性を感じさせるおばあさんたちが居たもんです」といった具合(原文が手元にないので、うろ覚え)。
狐狸庵先生がご活躍されていた時代と現代では、状況はまったく違います。今読めば、少々、時代錯誤だったり女性蔑視だったりするかも知れません。
でも、湯呑みの持ち方一つに表れる人柄って、どんなものなのだろうと未だに思うのです。

あなたにとっての「シック」とは?と質問されたら…いえ、誰も聞いてはくれないので、自問自答ですが。
私にとってのシックは、
大橋鎮子さんの言葉遣いと心遣い。
知性を感じさせるお茶の飲み方。
なのだと思います。
そうすると、では、「知性とはなんぞや?」という迷路に迷い込むのです…。
脳みそが暇なんですね、私。


作り話は19日「雨水」に更新します。

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by bowww | 2016-02-07 23:06 | 身辺雑記 | Comments(0)

金色のちひさき鳥のかたちして

十代の頃までの脳みそって、きっと乾いた砂のようなものですね。
退屈なはずだった教科書で覚えた知識が、ン十年経った今でも消えずに残っています。

 金色(こんじき)のちひさき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日の岡に 与謝野晶子

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通勤途中のお堂の銀杏は、市の特別天然記念物に指定されているようです。
正確なお年は分からないのですが、少なくとも大正時代には地域の人たちから慕われていた様子。
百歳は軽く超えているのでしょうね。
隣には、これまた面構えのいいヒノキが、まるで老友のように寄り添っています。
ヒノキの根元にはお地蔵さま。地域の拠り所だったのがよく分かる場所です。

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きっと今日あたりは、地面が金色の葉っぱで覆い尽くされているだろうと思っていってみたらば大正解。
昼下がりの日の光に照らされて、眩しいぐらいです。
大分寂しくなった梢を見上げていると、強い南風に吹き付けられて、葉が舞い上がり舞い散りました。
「ちひさき鳥」が、群になってざわめき、飛び立つように。
鳥たちが行く先に思いを馳せて…と言いたいところですが、銀杏の葉っぱは腐りにくいんですよね。
ご近所さんのお庭にたっぷり降り注いでいたけれど、後始末が大変だろうなぁ…。

銀杏もケヤキも、間もなく丸坊主になります。
冬が来ますね。

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by bowww | 2015-11-16 22:26 | 身辺雑記 | Comments(2)