玉のごとき(立冬)

 目の前を、女子高生たちがキャラキャラと通り過ぎていく。
 ベビーカーを押す若い母親が、なにやら我が子に語りかけながら通り過ぎていく。
 揃いの服を着た幼稚園児たちが、学生のような保育士にじゃれつきながら通り過ぎていく。
 買い物帰りらしい老いた夫婦が、荷物を分け合ってゆっくりと通り過ぎていく。
 誰も彼もが幸せそうに、楽しそうに見える。
 最初は小さな失敗だった。すぐに立て直せるはずだった。
 しかし、一度掛け違えたボタンはずれ続け、正しい場所はどんどん遠のいていった。
 そして、空っぽになった。
 行き先はもちろん、戻る場所さえなくなった。
 公園のベンチに座り込み、時が過ぎてくれることだけを待っている。

 小さな男の子が駆けてきて、ベンチの隅に何かを置いた。
 そしてまた、向こうへ駆けていく。
 視界の隅に鮮やかな黄色が飛び込んできた。
 見れば黄色の銀杏の葉が一枚。
 また駆けてくる。
 今度は赤く色づいた桜の葉三枚。
 次はもう一度、銀杏を二枚。
 その次は松ぼっくり。ハナミズキの赤い実も。
 ベンチの上は、たちまち賑やかになった。
 男の子を呼ぶ声がした。母親らしい。
 彼は初めてこちらを見てにっこり笑った。
「ほら、いっぱいきれいね」
 そして母親のところへ駆けていった。

   玉のごとき小春日和を授かりし  松本たかし


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秋らしい心地好い季節をほとんどスキップして、いきなり冬がやってきました。
山が雪を冠りました。根雪になるのはもう少し先かもしれませんが、あの雪が徐々に下に降りてきて、里も冬になるのです。
年の暮れが見えてきました。気が焦ります。。


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by bowww | 2016-11-07 01:32 | 身辺雑記 | Comments(0)


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