ここはどこのみち(秋分)

「すぐ近くのお宮がお祭りなんですよ」
 風呂から上がると祭り囃子が聞こえてくる。
 夕飯の時間はいつがいいか聞きに来た仲居に尋ねると、そう答えが返ってきた。
 そういえば、宿の裏手にこんもりとした鎮守の森が見えていた。
「ちょっと覗いてみようかな」
 私の独り言に、中年の人の良さそうな仲居はちょっと困ったように目を伏せた。
「地元の者(もん)だけの地味な祭りだから…大して面白くないと思いますけど…」
 小さな山里の祭りだから、よそ者は歓迎されないのだろうか。
「行かれるんなら、暗くなる前に。
 あったかくなさってくださいね、だいぶ風が冷たいですんで」
 夕飯の前に戻ると伝えると、仲居は再び愛想の良い顔に戻って部屋を出て行った。

 仲居の言葉が少し気になったが、鄙びた秋祭りの風情を楽しむのも一人旅の醍醐味だと出掛けることに決めた。
 浴衣から服に着替え、念のためカーディガンを羽織る。
 湯上がりの頬に、夕暮れの風が気持ちよい。
 宿の裏に回ると稲刈り間近の田んぼが広がり、鎮守の森を抱え込むように山が控えていた。
 まもなく沈む夕日に照らされて、振り向けば自分の影法師があぜ道に長く伸びている。
 虫の声が喧(かまびす)しい。
 神社にたどり着いた頃には、参道の提灯や石灯籠に明かりが灯されていた。
 参道には大きな杉が連なり、辺りより一段と闇が濃い。
 境内に人が集まっているのか、大勢の笑い声が時々わっと届く。
 祭り囃子はいよいよ賑やかだ。
 釣られて、少し浮かれた気持ちで歩き出す。
 そのとき、一際強い風が吹き抜け、提灯が一斉に揺れた。
 ぐらぐら揺れる明かりが参道の脇の暗闇を照らす。
 深紅の帯。
 満開の曼珠沙華。
 道に沿ってみっしりと花が並び、延々と続いている。
 風が、濡れたように赤い花の群を渡る。
 たゆたゆと、細い花弁が震える。

 そういえば先刻から、誰も来ないし誰ともすれ違っていない。
 誰もいない。


  舂(うすづ)ける彼岸秋陽(あきび)に狐ばな
   赤々そまれりここはどこのみち   木下利玄


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短歌及び作り話と、写真がまったく合っていませんがご容赦ください。。

木下利玄の故郷(岡山)では、曼珠沙華のことを「狐花」と呼んでいたそうです。
「舂く」は夕日が山に沈もうとする状態、だそうです。
曼珠沙華=彼岸花、写真に撮ってみたいのですが、なかなか出合えないのです。
気がつくと、民家の庭先や田んぼのあぜ道に咲いていたりして、盛りも過ぎてしまっていて…。
おっかなびっくり、でも憧れの花です。

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我が家の紫陽花に住み着いたアマガエルを記念撮影。
もう1匹、玄関先の植木鉢に住み着いています。
この2匹のおかげか、今年は門灯の周りに蜘蛛の巣があまり張られませんでした。
夜ごと小さな虫たちを食べてくれていたようです。
寒くなる前にしっかり肥えて、冬を越して、また来年会えるといいなぁ。

台風と秋雨前線のせいで、もう何日もお日様と青空を見ていません。
稲刈りもストップしてしまって、農家の皆さんが困っておられます。
早くカラッとスキッと晴れてくれないかしら。
厳しい残暑から一転、火の気がちょっと恋しいほど肌寒くなりました。
周囲でも体調を崩す人が多くなっています。
私は、秋の美味しいものを食べたい一心で、体調管理に励んでおります。
季節の変わり目、皆様もご自愛くださいますように。

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by bowww | 2016-09-22 21:59 | 身辺雑記 | Comments(0)


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