日脚

「春隣」という季語が好きです。

…という話題も、すっかりタイミングを逃してしまいました。。
先日、作り話を更新した際に、書きそびれていた呟きです。
写真は春隣の頃に訪れた、古本屋&カフェの「想雲堂」さんです。
以前からとても気になっていたお店で、先日初めてお邪魔しました。
本を読みながらコーヒーを飲んだり、夜はお酒が飲めたりするカフェです。
本に囲まれて、ゆっくり時間を過ごせる素敵な空間でした。

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「春隣」は冬の季語ですね。
気温はまだ寒いし、雪も当たり前のように降る。けれど、陽射しは確実に力強さを増している季節。
「春近し」などと同様の意味なのでしょうが、独特の温度感のようなものが好きです。
寒さでかじかんでいる肩先に、ふと温もりを感じるような。
丸まっている背中を、そっと撫でられるような。
気づくと、明るい光が背中合わせで寄り添ってくれている感じ。
私の住む辺りは、寒さが厳しい土地柄です。
「北海道の○○市より寒かったじゃん!」と驚くような最低気温も記録されたりします。
だからこそ、春の兆しに敏感になるのでしょうね。
立春を過ぎて、陽射しの強さに驚かされます。
まだ残っている雪に反射するせいで、明るさ倍増。
屋根の雪が溶けて滴りの音が盛んにし始めると、もう春です。
…とはいうものの、明日の予想最低気温は氷点下8℃。実際はもっと下がるでしょう。
春の女神はツンデレです…。


少し前に、とっても久しぶりに雑誌を買いました。
表紙の少女の清楚なスタイルと、「シックであること」というテーマに吸い寄せられて。
人は自分に足りないものを求めるのであります(故に、「整える」とか「断捨離」、「丁寧な暮らし」とかという言葉にも弱い。「いつまでも美しい人」なんていう台詞にはイチコロ)。
シンプルで上質な洋服やアクセサリー、日用品の紹介もとても素敵でしたが、「あなたが思う『シック』とは?」という質問に、センスが良い(と推察される)各界の方々が答えている特集が興味深かったです。
シック。
洗練?上品?大人っぽい?
漠然と憧れるフレーズです。
「大人の知的なセクシー」「成熟」などと、一言でずばりと言い切る人もあれば、「シックとは目に見えないことである。注目されたとき、シックは死ぬ。(以下略)」などと、まるで禅問答のような答えを提示する人もいました。
なかなか捉えどころがない、日本の「粋(いき)」とも似ているようで微妙に違う感覚なのですね。

「暮しの手帖」のエッセイ、「すてきなあなたに」が大好きでした。
1969年から続く人気エッセイ。それをまとめた単行本は全巻持っています。
もともとは祖父が母に買い与えたのですが、いつの間にか私のものになっていた1巻と2巻は、もう何度となく読み返しました。
やさしい清潔感溢れる言葉で、日々の小さな喜びや感動を「ちょっとお裾分け」といったふうに伝えてくれるエッセイです。
食べ物のお話も大好きで、ロイヤルミルクティーや桃のコンポート、缶詰の洋梨をジャム代わりに乗っけたトーストなど、真似をしては喜んでいました。
お洒落の仕方も、この本に教わりました。
形だけではないマナーも、この本で読めば素直に腑に落ちました。
著者の大橋鎮子さんは3年前にお亡くなりになったので、最新刊の6巻は複数の方が書かれた文章のようですね。

「すてきなあなたに」と同じ頃に読んでいたのが、遠藤周作の「狐狸庵シリーズ」。
「このおっさん、おかしな人だなぁ」とケラケラ笑ってしまうようなユーモア(下ネタも満載)に溢れていました。
実はキリスト教を題材にした、しごく重苦しい小説を書いている作家だと知ったのは、ずっとずっと後になってです。
今でも思い出すのは、その頃の奥さまたちのカルチャーセンター流行りを皮肉った文章です。
「少し昔はね、文化だ教養だなんて騒がずとも、お茶の飲み方一つで深い知性を感じさせるおばあさんたちが居たもんです」といった具合(原文が手元にないので、うろ覚え)。
狐狸庵先生がご活躍されていた時代と現代では、状況はまったく違います。今読めば、少々、時代錯誤だったり女性蔑視だったりするかも知れません。
でも、湯呑みの持ち方一つに表れる人柄って、どんなものなのだろうと未だに思うのです。

あなたにとっての「シック」とは?と質問されたら…いえ、誰も聞いてはくれないので、自問自答ですが。
私にとってのシックは、
大橋鎮子さんの言葉遣いと心遣い。
知性を感じさせるお茶の飲み方。
なのだと思います。
そうすると、では、「知性とはなんぞや?」という迷路に迷い込むのです…。
脳みそが暇なんですね、私。


作り話は19日「雨水」に更新します。

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by bowww | 2016-02-07 23:06 | 身辺雑記 | Comments(0)


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